前提条件別の運用選択肢

 ジュニアNISAにあっても、「運用者のポートフォリオ全体を最適化し、その中の適当な部分をそれぞれの口座(確定拠出年金やNISAなど)に割り当てる」のが最適だという、おおもとのロジックは変わらない。

 ただし、ジュニアNISAの場合、

  1. ジュニアNISAの資金をどこまで「親のポートフォリオ」の一部と見なすべきかが曖昧だということと、
  2. ジュニアNISAがNISAよりも更に非流動的な運用口座であること、などの前提条件があり、加えて、
  3. 子供に対する情報・教育効果

 も少し考えたい。

 子供の18歳以降の子供の教育費・養育費を親が相当程度以上負担するケースでは、ジュニアNISAの資産は、事実上親の資産の一部であると考えていいだろう。18歳以降も子供の面倒を見ていて、教育費や養育費にジュニアNISAの資産が足りなければ、親が不足分を負担するのだからそうなる。

 この場合、親の運用資産全体の中の一部としてジュニアNISAの運用枠を利用することになる。確定拠出年金、親自身のNISAなどを超えてなお余りある運用資産をお持ちの親御さんの場合、NISAに準ずる運用でいいだろう。ただし、NISAよりもさらに非流動的なので、運用対象は広い範囲をカバーするインデックスファンドのETFにほぼ決まるはずだ。

【A案】「TOPIX連動型ETF40%+外国株(先進国中心)インデックスファンド」、あるいは【B案】「グローバル株式のETF」(現状では海外上場のもの)が適切な選択になる公算が大きい。

 もちろん、全体のバランスは、課税口座での運用や、スイッチングが可能な確定拠出年金の運用の変更で調節する。

 また、子供が小さくて、非常に長期にわたる運用が想定される場合、ジュニアNISA内ではリバランスが出来ない仕組みなので、【B案】ないしは、【C案】「株式比率の高いグローバル・バランスファンド」(手数料の安いものを選びたい)が候補に入る。

 ジュニアNISAの使い方として、「お前の将来の資金として80万円ずつ5年間、400万円投資してやる。将来、学費でも何でも、好きなものに使え。その代わり、足りない分は、アルバイトでも何でもやって、自分で何とかしろ」といった、自立促進型(?)の使い方もできる。

 この場合、ジュニアNISAの資産は実質的に子供のものという色彩が濃くなるので、節税メリットを最大限に生かすためとはいえ、株式100%は、子供にとって少しリスク感が過大に思えるかも知れない。この場合も、【C案】あるいは、【D案】「アセットクラスが分散されたインデックスファンド(ETF)」が浮上する。

 また、ジュニアNISAの資産への関心を通じて、子供に投資教育をするアイデアもあり得る。この場合、【E案】「日本株ETF+米国株ETF+欧州株ETF+新興国株ETF」といった、国・地域別の株式インデックスに連動するファンドを見繕って、「将来、君が使う資金だ。よく見ておけ」と渡す手がある。また、この場合、【A案】も日本株が独立しているので、ある程度目的にかなう。

最大公約数的には【A案】なのかと思うが、個人的には【B案】も使い勝手が良さそうに思える。

 ところで、ジュニアNISAに関して、【A案】~【E案】の選択以上に重要なことがある。それは、ジュニアNISAは金融機関の変更が出来ないので、間違っても銀行にジュニアNISA口座を開かないことだ。

 銀行ではETFが利用できない。インターネット取引専用のノーロードのインデックスファンドなどを使えば「損害」を年間1万数千円程度(400万円に対して)に抑えることが出来るが、意思決定として「明らかな損」なので、避けるべきだと強調しておく。

※本記事は2016年1月8日に公開したものです。

追記

 ジュニアNISAは現在までにそれほど普及しているとは言えないが、現在お金にある程度余裕のある親御さんが子供の将来のために「お金のタイムカプセル」のようなつもりで利用する価値は今もあり、学資保険のような市販商品よりもずっといい。その後、運用商品が増え、特に公募の投資信託で海外株式に投資するインデックスファンドの手数料が大きく下がった(ETFでなくても良くなった)。

 今なら【A案】〜【E案】まで選択肢を並べるようなことはしない。親の資産運用全体の中でリスクが調整されることを思うと、【案1】外国株インデックスファンド6割+TOPIXインデックスファンド4割、あるいは【案2】グローバル株式のインデックスファンド、のせいぜい2択でいいと思う。もちろん、銀行などの対面窓口で口座を開くよりも、ネット証券がいいことについては、何ら変化がない。 

2019年8月 山崎 元