国内市場での株主還元トレンドにも要注目

 6月14日付け本レポート「世界で長期金利が低下! 国内の連続増配銘柄に注目」では、「長期連続増配」を記録している国内企業群への分散投資をご紹介しました。TOPIXベースの配当利回りスプレッド(予想配当利回り~10年国債利回り)は、2.7%と過去10年で最高水準となっています。これは、債券市場利回りと比較して株式の配当利回りがかつてなく上昇している(株価が過度に下落して割安感を強めている)ことを示しています。

 一方、欧米市場に倣い、国内市場でも「株主還元を意識した経営」を重視する企業が増えており、「配当の安定」や「増配(配当の増加)」が評価を高めています。図表3は、TOPIXベースの12カ月累計配当額(実績)と予想配当額の推移を過去10年検証したものです(市場予想平均)。個別銘柄の株価の集合体(時価総額加重平均株価指数)である株式相場は、短期でこそ需給変動に揺れて上下してきましたが、過去10年を長期で振り返ると、「株価(TOPIX)が10年で約2倍となったのは、配当実績が同期間で約2倍となってきたから」とも言えそうです。

 TOPIXベースの配当は増配傾向を続けており、今期も史上最高を記録する配当水準が視野に入っていることが日本株の底堅さを支えていると言えます。今年度は、国内市場全体としては「業績が横ばいでも配当を維持もしくは増益で増配」となる見込みです。米中貿易摩擦に対する警戒感が緩和し、欧米の金融政策を巡る不透明感が後退すれば、株価の戻り余地を拡大させるドライバーになると考えています。

<図表3>国内株価を下支える日本企業の「株主還元傾向」

*12カ月累計配当額と予想配当額はBloomberg集計による市場予想平均です。
出所:Bloombergのデータより楽天証券経済研究所作成(6月19日)


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