FOMCはハト派姿勢を確認-今年は利上げゼロ予想

 前述の通り、米国と欧州の金融当局が政策姿勢を緩和させたことで、先進国の債券市場では名目金利と実質金利(名目金利-期待インフレ率)が低下しています。これにより市場の「流動性期待」が改善し、世界市場で株式の他に、REIT(不動産投信)、高利回り債券市場の回復を促しました。こうしたなか、市場が今週注目していたのがFOMC(19-20日)で示されるFRBの金融政策と方針でした。発表されたFOMC声明とパウエル議長の記者会見では、以下を明らかにしました。

(1)世界景気の鈍化と米国の経済活動の伸び鈍化を認識
(2)政策金利の誘導目標(1.25-1.50%)を据え置くことを決定
(3)FOMCメンバーの政策金利予想平均(中央値)が「年内は利上げなし」に変化
(4)保有資産(量的金融緩和)の縮小を9月に停止する方針も決定
(5)今後も金融政策のコントロールを柔軟かつ慎重に実施していく方針


 昨年、市場が「金融当局による利上げ継続と保有資産の縮小」を「流動性の減退」と受け止めた経緯があっただけに、「流動性が想定していたより潤沢に維持される」と認識させたいようです。図表2が示すとおり、FOMC直後の米国債券利回りと実施金利は一段と低下し、金融環境としてリスク資産を下支える動きを示しています。

図表2:米国の政策金利、債券利回り、実質金利の推移

*実質金利=10年国債利回り-市場の期待インフレ率(10債ベース)
出所:Bloombergのデータより楽天証券経済研究所作成(2016/1/1~2019/3/20)

 図表2で注目したいのは、金融政策の先行きに敏感とされる短期債金利(2年国債利回り)が政策金利を下回っていることです。

 先物市場(CME=シカゴ・マーカンタイル取引所)の値動きをベースに政策金利の先行きを占う「FED Watch」によると、2019年12月11日のFOMC後の政策金利が現行水準(誘導目標:2.25~2.50%)で維持される確率を64.7%、「利下げが実施される確率」を35.3%、「利上げが実施される確率」をゼロと予想しています(20日のFOMC結果発表後)。

 FRBが内外景気や市場変動に配慮する姿勢を確認したことで、金融市場にボラティリティ(変動性)の縮小期待が広まってきたと言えるでしょう。