成長期待

c. 検索・広告事業のさらなる拡大

 アルファベットの広告事業は、動画広告の拡大などにより当面堅調な推移が期待できますが、将来的には付加価値の高い検索・広告サービスの強化によって、さらに広告主を惹きつけることが期待できます。

 ネットで何かを検索をする場合、人々には「検索対象だけではなくて関連性が高い情報も欲しい」、検索対象が商品の場合は「どこで購入すれば得なのか」まで知りたいといったニーズがあると考えられます。特にネットショッピングの場合は、「商品決定→買い物かご→決済」という一連の作業を早く済ませたいと思う人も少なくないでしょう。同社は、こうしたニーズを満たすサービスの提供を始めています。ストレスフリーの購買体験を提供することによってユーザーを惹きつけ、広告主側にとっても購買まで効率的にユーザーを導く流れを作ろうとしています。以下はその例です。

・グーグル検索ショッピング

「グーグル検索」で調べて出てきた食品や日用品を直接注文できるサービス「ショッピング・アクション・プログラム」が米国で展開されています。表示された商品を選ぶと、グーグルの即日宅配サービス「グーグルエクスプレス」で配送されます。一度注文した商品はワンクリックで再注文可能。スマートスピーカーの「グーグルホーム」から音声で注文することもできます。

 全ての検索結果が対象になるのではなく、プログラムに参加した小売店の商品が配送対象になりますが、提携企業には小売りのビッグネームが名を連ねています。大手スーパーのウォルマート(WMT)、大手量販店のターゲット(TGT)、倉庫型卸売・小売りのコストコ・ホールセール(COST)ナイキ(NKE)、大手電化製品店のベスト・バイ(BBY)、化粧品専門店大手のセフォラなどです。

 アマゾン・ドット・コム(AMZN)への対抗策として、小売店各社は独自のオンライン・プラットフォームを築いてきましたが、多くのユーザーが利用する「グーグル検索」を販路に活用できれば、より多くのネットショッピング・ユーザーを獲得するチャンスが生まれるでしょう。

・ビジュアル検索

 目の前にある物にカメラをかざすだけで、その物の名称や情報を得られる「グーグルレンズ」が広がりをみせています。これまでは基本的に、グーグルの携帯端末である「Pixcel(ピクセル)」で利用できるものでしたが、日本語に対応した「グーグルレンズ」が他のアンドロイド端末でも利用できるようになりました。

「グーグルレンズ」は「グーグルフォト」の写真についても画像解析でき、QRコードやバーコードの読み取り、文章の読み取りにも利用できます。画像解析できない場合でもQRコードやバーコードで商品情報を読み取ることができ、ユーザーは文字を打つことなく声も出さずに商品を調べることができます。ユーザーが興味を持って写した物から連想される商品を提案することで、広告主も効率的にユーザーを誘導できると考えられます。

・「ユーチューブ」「グーグルマップ」の進化

 同社は、グーグルマップの「ローカル広告検索」を強化しています。「ローカル広告検索」とは、ユーザーがどこかに移動する目的で開いたグーグルマップ上に、店舗への来店などを促す広告です。ユーザーがそのエリアに行く可能性が高いため、広告主にとっては効率的な広告展開となります。さらに今後は、ユーザーがよく利用するエリアで割引クーポンを発行するといった施策展開が拡大するでしょう。「ユーチューブ」については、皆さんも広告動画をご覧になったことがあると思いますが、今後は、映画の広告動画からそのままチケット購入まで進めるような、シームレスな購買体験を拡充させていくとみられます。

 

株価見通し

 アルファベットのコンセンサス予想は中期的な業績拡大を示唆していますが、デジタルサービス課税が世界的に広がれば、伸び率は現時点のコンセンサス予想よりも鈍化するでしょう。ただ、ビジネスモデルの軸となる広告事業が強く、今後も成長余地が残されていることから、長期的な業績拡大には期待が持てます。予想PER(2018年12月期)が20倍台にとどまっていることを考慮すると投資妙味があります。