構造改革期待で好転したブラジル市場にも注目

 一方、最近の新興国市場(MSCI Emerging Markets Index)の底入れにも注目です。

 中国の習主席は5日に開催された第1回中国国際輸入博覧会で「中国は今後15年で物品とサービスを合計40兆ドル(約4,500兆円)輸入する」と表明しました。

 景気減速(経済成長率の鈍化)に直面する中国は、投資・輸出をエンジンとする成長から個人消費主導型成長へのシフトを目指し、自動車減税や輸入関税引き下げを実施する方針も示しています。中国の消費拡大と輸入拡大が実現するなら世界の経済成長を下支えしそうです。

 そうした中、ここのところ新興国株式の回復をリードしているブラジル市場にも注目したいと思います。

 10月28日に実施されたブラジル大統領選挙(決戦投票)で、「ブラジルのトランプ」と呼ばれるジャイル・ボルソナロ下院議員(右派のPSL[社会自由党])が左派のアダジ元サンパウロ市長に勝利しました。ブラジル市場は、約13年続いた左派政権(労働党中心)の終えんと、財政再建、年金改革、民営化などの「構造改革」を公約に掲げてきたボルソナロ新大統領の誕生を期待。ブラジル市場は大統領選挙前から堅調に転じてきました。

 図表2が示すとおり、株式市場を象徴するボベスパ指数は年初来高値をすでに更新しました(年初来騰落率は+14.8%)。通貨レアルの対円相場も安定化しています。2019年初に大統領に就任するボルソナロ氏は、金融市場の評価が高いパウロ・ゲジス氏(市場重視派の経済学者)を財務大臣に指名し、新政権が新自由主義的な経済政策と構造改革を進める姿勢を確認しています。

図表2:ブラジルの株式と通貨レアルは堅調に推移

出所:Bloombergのデータより楽天証券経済研究所作成(11月7日)

 ブラジルの株式や通貨レアルが来年も堅調を維持するには新政権下で、ブラジル経済の弱点とされてきた財政再建が目に見える形で現れる必要があります。

 ボルソナル大統領が、議会の大勢を占める左派勢力との調整を経て、年金制度改革、バラマキ的支出の縮小、民営化策を実行に移せるか否かを見極める必要があります。

 なお、ブラジルは世界でも有数の資源大国であり農畜産大国でもあります。米中貿易摩擦の影響で、ブラジルから中国向けの大豆輸出が拡大しています。新大統領の誕生を契機に、ブラジルの政治経済動向は今後一層市場の注目を集めそうです。