今週の株式市場ですが、これまでのところ、国内では日経平均株価が3万8,000円台水準を意識した攻防戦の様相となっていますが、米国株市場に目を向けると、ダウ工業株30種平均が節目の4万ドル台を回復しているほか、ナスダック総合指数も節目の1万8,000pをうかがうところまで株価を戻してきています。

 また、S&P500種指数については、5,600pを回復し、7月16日に付けた最高値(5,669p)も視野に入ってきています。

 実際に直近の高値から安値までの「戻り率」を確認すると、米国株の方が日本株よりも順調に値を戻していることが分かります(下の図1)。

<図1>日米の株価指数の状況(2024年8月21日時点)
※高値と安値はそれぞれ取引時間ベース

出所:MARKETSPEEDIIデータを基に筆者作成

 こうした足元の株価の戻り基調の背景には、株価急落後に公表された米国の経済指標(7月分の消費者物価指数や小売売上高など)の結果が比較的堅調で、急落の原因とされた米景気後退懸念が緩和されたことや、9月のFOMC(米連邦公開市場委員会)で利下げの実施がほぼ確実となっていることがあらためて意識されたことが挙げられます。

にわかに「ジャクソンホール会議」への注目が高まるワケ

 そんな中、米国では今週の22日(木)から24日(土)にかけて、「ジャクソンホール会議(米カンザスシティ連邦準備銀行が主催する毎年恒例の経済シンポジウム)」が開催されていますが、このレポートが掲載される23日(金)の夜(日本時間)に、パウエルFRB(米連邦準備制度理事会)議長が講演を行う予定となっています。

 パウエル議長の講演は、米国の景気や金融政策に対するFRBの認識やスタンスを探る手掛かりとなるわけですが、最近までの市場は、「次回(9月17~18日開催)のFOMCで利下げの実施を示唆するものの、利下げ幅については0.25%なのか、それとも0.5%なのかについては言及しないだろう」という見通しでした。

 基本的にこの見通し自体は株価の急落前と大きく変わっていませんが、市場の一部では0.5%の利下げ幅を期待しているような動きも見られます。例えば、10年債利回りは今週に入ってから低下基調となっていて、株価急落時につけた8月5日の3.7%台まで低下しています。

<図2>米10年債利回りの推移(2024年8月21日時点)

出所:楽天証券WEBサイトを基に筆者作成

 そもそも、先日の株価急落は米国の景気後退懸念がきっかけとなっていただけに、「大きめの利下げ幅で景気を下支えしてほしい」といったところなのかもしれません。

 しかも、今週の21日(水)に、米労働省が雇用統計の年次改定を行い、この1年間の就業者数の増加が下方修正される見込みであることが発表されました。具体的に見ていくと、非農業部門雇用者数が、毎月24.2万人増のペースだったのが、17.4万人増へと縮小の修正がかなり大きくなっていて、労働市場が思ったよりも良くない可能性が浮上してきました。

 米景気については、前回のレポートで「消費の陰りに注意したい」ことを指摘しましたが、それに加えて、「やっぱり労働市場の方も気掛かりかもしれない」となった格好です。最大のヤマ場は9月6日の米雇用統計(8月分)ですが、その発表を前に、まずは23日(金)のパウエルFRB議長の発言への注目度がにわかに高まったといえます。

 また、仮に今後の市場が0.5%の利下げを織り込みに行った場合、「利下げ効果による景気下支え」でポジティブに捉えるか、それとも、想定以上の景気減速によって利下げ幅の拡大に迫られる「後手の対応」としてネガティブに捉えられるかの綱引きになることも想定され、株式市場が急落前の高値の回復に向かって進めるかどうかのポイントになるかもしれません。