年々高くなる「安定」の難易度
彼らが求める「安定」は、一定ではありません。2016年の「アルジェ合意」「ウィーン合意」の時代は、価格を上げることで「安定」を手に入れることができました。しかし、今は、原油価格をさらに上げることや、産油国間の結束を強めることが「安定」のために必要になりました。
「安定」を手に入れるための難易度は格段に上がっているのです。背景には、西側諸国が正義と疑わない「脱炭素」と、西側・非西側の「世界分断」があります。脱炭素下は、産油国の原油輸出量が減少し、国の存続が危ぶまれるため、今よりもさらに高い原油価格が必要です(収益を維持するため、数量の減少を単価の上昇で補う必要がある)。
図:OPECと非OPEC産油国の協力宣言が7年経過(2023年12月10日)
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では、産油国は原油価格がいくらであれば満足するのでしょうか。以下は、IMF(国際通貨基金)が集計・公表する、財政収支均衡のために必要な原油価格です。OPECプラスの一員として減産を実施している主要国について、言及されています。
OPECプラス内のOPEC側のリーダー格であるサウジアラビアは「93.3ドル」です。そして、サウジアラビア、アルジェリア、クウェート、イラク、アゼルバイジャンの平均が「85.0ドル」です。
100ドルを超えたり、50ドル近辺でも財政が均衡したりする、やや極端なケースを除けば、85ドルが多くの産油国が「安定」する価格と言えそうです。足元の水準では「安定」しないのです。彼らは「安定」を求め、強い覚悟をもって減産を行っているのです
西側諸国では、石油開発を積極的に行っている企業は環境への配慮がなされていないため投資を控えるようにしよう、プラスチック製品の消費量は減らした方が環境にやさしいのでビニール袋は有料にしようなどと、直接・間接、程度の大小問わず、石油を否定する動きが目立っています。こうした動きがまさに、彼らを不安定にし、彼らを厳格な減産に駆り立てているのだと言えます。
図:主要原油輸出国の財政収支が均衡する時の原油価格 単位:ドル/バレル
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