今、JR東日本に注目する理由

 短期的には、4社とも株価は上値の重い展開が予想されます。来期(2022年3月期)になっても、業績の回復は鈍いと考えられるからです。ただし、中期的な成長力を考えれば、JR東日本に少し投資してみるのも、悪くないと思います。

 東京を地盤に持つ強みに加え、不動産・小売・観光・金融など多角化事業で利益を伸ばしていく余地が大きいと考えているからです。ちなみに、2020年3月末時点で、JR東日本は、賃貸不動産に1兆5,488億円もの含み益を有します。含み益の大きさでは、三菱地所・住友不動産・三井不動産についで第4位です。コロナ禍を受け、都心の不動産需給は緩みつつありますが、それでも過去7年間の不動産ブームで膨らんだ含み益は大きく、JR東日本の投資価値を高める効果があると思います。

賃貸不動産含み益上位4社の含み益推移:2013年3月~2020年3月

出所:各社有価証券報告書(住友不動産のみ決算短信)より、楽天証券経済研究所が作成

 私は、JR東日本は事実上、日本最強の不動産会社だと思っています。日本の不動産価格は、JR駅前が一番高く、駅から遠ざかるにつれて安くなる傾向があります。JR東日本は、首都圏でもっとも価値の高いJR駅周辺に豊富な土地を有するので、不動産会社として圧倒的に優位です。

 鉄道事業で使わなくなった土地を再開発して、オフィスビルの保有を増やしてきました。立地抜群で競争力が高く、土地取得コストがかからないので収益率も高くなります。リモートワークの広がりで都市部の不動産価値がやや低下しているものの、それでも都心一等地の不動産の価値がきわめて高い事実は変わらないと思います。

 JR東日本は、規制緩和によって、駅ナカや線路上空が利用できるようになってきたメリットも受けています。駅ナカに展開する「ルミネ」など小売ビジネスは、高い競争力を有します。自前で小売業をやるのでなく、抜群の立地を有する小売スペースの管理者として、その時々で一番はやっている専門店を入店させていくので、ある意味、最強の小売業と言えます。

 今、頓挫していますが、リゾート・観光業でも成長余地があると思います。いつになるか明確に見通せませんが、コロナ収束後に、観光業の利益が増加トレンドに戻ると予想しています。

 コロナ収束後、すぐには外国人観光客は戻らない可能性があります。ただし、その分、日本人が海外旅行に行くのも減ると思います。外国人が戻らない間は、日本人による日本旅行が盛り上がると思います。

 外国人観光客が戻るころには、日本人も海外に行くようになると思いますが、どちらにしろ、自然の美しい日本での旅行需要にはこれからもかなりの成長余地があると考えています。

 JR九州が2013年に導入した豪華寝台列車(クルーズトレイン)「ななつ星in九州」の旅はコロナ前、常に大人気でした。従来の寝台列車とは異なり、動くホテルのような快適さが受けています。JR九州の成功を見て、JR西日本・東日本も豪華寝台列車の旅を導入しましたが、いずれも好評でした。

 私の勝手な予想ですが、コロナ収束後、いずれJR各社が提携して豪華寝台列車を使って全国をめぐる長期旅行が売り出されると思っています。そうなれば、さらに高い人気を集め、4社の収益拡大に寄与すると考えています。