為替DI:2月のドル/円、個人投資家の予想は?

楽天証券FXディーリング部 荒地 潤

 楽天DIとは、ドル/円、ユーロ/円、豪ドル/円それぞれの、今後1カ月の相場見通しを指数化したものです。DIがプラスの時は「円安」見通し、マイナスの時は「円高」見通しで、プラス幅(マイナス幅)が大きいほど、円安(円高)見通しが強いことを示しています。

出所:楽天DIのデータより楽天証券経済研究所作成

「2月のドル/円は、円安、円高のどちらへ動くと予想しますか?」

出所:楽天DIのデータより楽天証券経済研究所作成

 楽天証券が先月末に実施した相場アンケートの結果によると、回答を頂いた個人投資家6,663人の38%(2,552人)が、2月のドル/円は「ドル安/円高」に動くと予想していることがわかりました。1月は53%が円高を予想していました。

ドル高/円安」は最も少ない25%(1,662人)で、残りの37%(2,449人)は「動かない(わからない)」という答え。

 昨年6月以来ずっと多数派を占めてきた円高派はここに来て減っているのですが、まだ円安派に転向する踏ん切りがつかない投資家も多いようです。とりあえず今月の相場展開を眺めて決めるか、というスタンスでしょうか。

イエレン財務長官とドル安

 バイデン新政権のもとで財務長官に就任するFRB(米連邦準備制度理事会)前議長のイエレン氏は、「ドルの価値は市場によって決定されるべきであり、自国の輸出を有利にするためにドル安を求めることはしない」と述べ、為替操作に断固反対する立場を明らかにしました。トランプ前大統領のドル安誘導政策と決別したという意味では、「ドル高志向」と受け取れます。

 だからといって、米国が長期的なドル安傾向に歯止めをかける政策をとるのかというと、そうではない。むしろその逆です。

 イエレン財務長官は、コロナ禍から一刻も早く米経済を立ち直らせるには「大胆な行動(Act Big)」が必要であるとして、バイデン大統領の大型景気刺激策を応援する立場。お金が必要とあれば、米50年債の発行も検討するということです。

 そしてFRBは超緩和路線を継続。ゼロ金利を続けて物価が一時的に2%を超えてもFRBは利上げしない。ずっと先の話を心配するより、まずは米経済を「ホット」にすることが大事だとパウエルFRB議長は語ります。

 バイデン政権の景気刺激策、イエレン財務長官のドル高政策、そしてパウエル議長のゼロ金利のトリオによって米国が経常赤字(貿易赤字)と財政赤字の「双子の赤字」の拡大方向へ進んでいることは明らか。双子の赤字の増大は、将来的に深刻な経済危機を誘発することになり、投資家の深刻なドル離れにつながるリスクをはらんでいます。

 米国の政策は、ドル高ではなくドル安。為替操作はしない。しかし市場によって決定されるドルの価値は安くなります。

バイデン大統領とドル安

 トランプ前大統領の4年間で、アメリカ社会の分断はこれまで以上に深刻になったといわれています。2021年1月6日、トランプ氏の支持者が大挙して連邦議会に乱入したことは、分断を象徴する出来事として長く米国民の記憶に残るでしょう。

 しかし、米国の政治もまた分断されています。米大統領選挙後の米議会は、共和党と民主党の政治の対極化が進みました。バイデン大統領の政治運営を困難にしているのは、議会における両党の勢力が拮抗(きっこう)していること。米下院において民主党は過半数を維持していますが、選挙で議席を減らしました。上院の議席は共和党と同数で、紙の差一枚(ハリス副大統領一人)の有利でしかない。バイデン新大統領は、ありとあらゆる問題で共和党からの攻撃に直面するだけでなく、民主党内部の左派や中道派が満足するような調整役も果たさなくてはいけない。

 バイデン政権は、まずはコロナ対策を最重要課題として取り組み、続いてインフラ投資に焦点を当てると予想されています。増税法案については、年内にインフラ投資とパッケージにして提出される可能性が高い。景気刺激策について共和党は、金額が大きすぎると反対。増税は、規模とその対象範囲で民主党内部をまとめることができるのか。米政治の分断化はドル安です。

出所:楽天DIのデータより楽天証券経済研究所作成

 楽天証券の相場アンケートによると、27%の個人投資家が2月のユーロ/円は「ユーロ安/円高」に動くと予想しています。1月は37%でした。

ユーロ高/円安」に動くは、最も少なく18%。最も多かった回答は「動かない(わからない)」の55%。昨年末から年頭にかけてあれほど勢いのあったユーロ上昇に急に陰りが見えて、戸惑いを感じる個人投資家が多いようです。

出所:楽天DIのデータより楽天証券経済研究所作成

 楽天証券の相場アンケートによると、22%の個人投資家が2月の豪ドル/円は「豪ドル安/円高」に動くと予想しています。1月は29%でした。

「豪ドル高/円安」に動くは、19%。最も多かった回答は相変わらずの「動かない(わからない)」で59%。

 1月のドル相場のなかでの豪ドル/円は、豪ドル安と円安の動きに相殺して方向感に欠けました。