はじめに

 今回のアンケート調査は、2024年3月25日(月)~27日(水)にかけて行われました。

 3月末の日経平均株価は4万0,369円で取引を終え、節目の4万円台を維持して年度末を迎えたほか、月足ベースでも3カ月連続の上昇となりました。

 あらためて月間の値動きを振り返ると、日経平均は34年ぶりに史上最高値を更新した前月(2月)からの流れを引き継ぎ、月の頭は4万円台に乗せる好調なスタートとなりました。

 その後は4万円水準を挟んだ攻防がしばらく続きましたが、月の半ばにかけては、相場のけん引役だった半導体・ハイテク株の上昇が一服したほか、日米の金融政策イベントを控えて売りに押され、3万8,000円台の前半まで下落する展開となりました。

 しかしながら、バリュー株などを中心に物色の広がりが見られたほか、25日移動平均線がサポートとして機能するなど下値では買いが入り、さらに月末にかけては、金融政策イベントを無難に通過した安心感や、円安の進行に伴って再び上昇に転じ、一時4万1,000円台に乗せる場面も見られ、高値圏での株価推移を維持しました。

 このような中で行われた今回のアンケートですが、5,500名を超える個人投資家からの回答を頂きました。日経平均・為替の見通しDIは、ともに前回から鈍化したものの、株価の先高観と円安基調が維持される結果となりました。

 次回もぜひ、本アンケートにご協力をお願いいたします。

日経平均の見通し

「DIは低下も株価の先高観は維持」

楽天証券経済研究所 シニアマーケットアナリスト 土信田 雅之

 今回調査における日経平均の見通しDIは1カ月先がプラス28.85、3カ月先はプラス12.43となりました。

 前回調査の結果(それぞれプラス52.40とプラス13.51)からは低下したものの、とりわけ前回の1カ月先のDI値が高過ぎたことや、今回の結果自体も過去のDI値と比べれば高い方であり、全体的に株価の先高観は維持された格好といえます。

 実際に、回答の内訳グラフを見ても、強気派の割合は1カ月先で40%、3カ月先でも30%を超えており、いずれも弱気派を大きく上回っています。その弱気派についても、1カ月先が前回の6.63%から12.57%へと倍近くに増えていますので、前回に見られたような過熱的なムードが一服した印象です。

出所:楽天DIのデータより楽天証券経済研究所作成
※四捨五入の関係で合計が100にならない場合がある
出所:楽天DIのデータより楽天証券経済研究所作成
※四捨五入の関係で合計が100にならない場合がある

 また、2024年相場は早くも3カ月が経過し、新年度の4月相場を迎えました。

 直近3カ月の日経平均の月間上昇幅を見ると、1月が2,822円、2月が2,879円、3月が1,203円となっており、3カ月間で7,000円ほど上昇してきたことになります。

 2月下旬には約34年ぶりに史上最高値を更新し、3月頭には4万円の大台に乗せるなど、相場の強さを印象づける出来事が続きましたが、3月の上昇幅にも見られるように、さすがにその勢いは落ち着きつつあります。

 とはいえ、今回の調査結果が示すように、足元の相場のムードは株価の先高観が強いほか、4月後半からは国内企業の決算発表シーズンが本格化していきます。

 日経平均を構成する225社のEPS(1株当たり利益)予想の平均をまとめると、全体では2025年3月期で10%ほど伸びるという見通しが優勢となっており、このまま業績期待の買いへとつなげることができれば、日本株がもう一段階上振れる展開も想定されます。

 とはいえ、3月末29日時点の日経平均の予想PER(株価収益率)は17倍台まで上昇しています。過去10年間の平均が15倍程度ですので、単純に過去と比べると日経平均は割高感が出ていることになります。

 もっとも、PERは「株価÷EPS」で計算されますので、今後の企業決算発表で分母のEPSが10%以上増えていくことを前提にするならば、理屈の上では15倍台まで低下することになるため、シナリオ通りに進むのであれば、現在の株価は正当化されます。

 ここからいえるのは、「足元の相場はこうした事態をすでに先取りしている可能性がある」ことと、「さらに株価が上昇するには、割安感の修正だけでは難しく、さらなる業績の伸びが必要」ということになります。

 例えば、メガバンク株(三菱UFJフィナンシャル・グループ・三井住友フィナンシャルグループ、みずほフィナンシャルグループ)は高値圏での推移が続いているものの、3月上旬につけた高値を超えられない状況となっています。

 足元のメガバンク株のPERやROE(自己資本利益率)、PBR(株価純資産倍率)などの指標を見ると、バンク・オブ・アメリカやウェルズ・ファーゴ、シティGといった米大手銀行と比較してもあまり変わらない値となっており、すでに割安感の修正が完了しています。

 米著名投資家のウォーレン・バフェット氏の発言で注目を浴びた大手商社株も高値圏でのもみ合いとなっており、日本株の割安感の修正が進むにつれて、物色できるセクターや銘柄の選択肢が狭まりつつあることや、円安以外の業績上振れ材料が欲しいことなどを踏まえると、今後もこれまでのような大幅な株価上昇を演じていくためのハードルは上がってきているといえます。

 従って、ここからは積極的に上値を追うよりも、株価が調整した際の押し目を拾うような投資戦略の見直し点検が必要になる局面が訪れるかもしれません。

今月の質問「今、日本株を売りますか?」

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト 吉田 哲

 ここからは、テーマを決めて行っている「今月の質問」について書きます。3月のテーマは「今、日本株を売りますか?」でした。日経平均株価は3月上旬に4万円台に到達した後、上値が重い展開が続いています。こうした中、日本の個人投資家の皆さまがどのような考えをお持ちかを尋ねてみました。

図:質問1

出所:楽天DIのデータより楽天証券経済研究所作成
※四捨五入の関係で合計が100にならない場合がある

 質問1は、日経平均が高値圏で推移している中で、保有している日本株を売るかどうかを尋ねるものでした。回答者の4分の1強に当たる26.6%が「様子見(何もしない)」を選択しました。日経平均が2月にバブル期の高値を更新したり、4万円の大台を達成したりした時点で、あるいはそれ以前に、すでに日本株を売っていた方がこの選択肢を選択した可能性があります。

 また、継続して日本株を保有している方のうち、4万円の大台を達成したり、頭打ち感が出たりしても、長期視点でまだ上昇すると考えている方がこの選択肢を選択した可能性もあります。

 次点は「売りと買いを両方する(保有銘柄を入れ替える)(17.8%)」、次いで「下がったら買う(17.3%)」、そして「一部売る(15.5%)」が続きました。日経平均が高値圏で推移していることを警戒しつつも、相場変動に臨機応変に対応すべく、さまざまな戦略を練られている方が多いことがうかがえます。

「積み立て投資を続ける」(14.3%)を選択した方もおられました。一方で「ほとんどすべて売る」や「すぐ買う」など、やや極端な方針の方は少数でした。

図:質問2

出所:楽天DIのデータより楽天証券経済研究所作成
※四捨五入の関係で合計が100にならない場合がある

 質問2は、今、日本株の動向に影響を与えている材料について尋ねました(複数回答可)。「日本銀行の金融政策」(18.6%)が最も多く選択されました。歴史的といわれたマイナス金利政策解除を決定した金融政策決定会合は3月18日から同19日でした。同会合後のアンケート実施だったこともあり、この回答結果には会合の決定事項への思惑が色濃く出たといえます。

 日本経済がマイナス金利を解除して金融政策を正常化に向かわせることができるくらい安定してきていることを好感したり、ETF(上場投資信託)の買い入れ終了を嫌気したり、今後の金利上昇観測が、銀行などの金融機関の業績が改善する期待を生んでいると好感したり、個人や企業の資金調達が鈍化する懸念があると嫌気したりするなどさまざまな思惑が交錯し、話題が事欠かなかったことが、18.6%もの方々がこの選択肢を選択した背景にあると考えられます。

 次点は「ドル円相場」(17.4%)、そして「米国の動向」(14.5%)が続きました。ドル円相場は日本銀行の金融政策とFRB(米連邦準備制度理事会)の金融政策の影響を強く受けます。その意味では、「米国の動向」をFRBの金融政策と受け止めた方が一定数おられた可能性があります。

 FRBの動向以外にも、11月の大統領選挙や足元のテスラのEV生産減速、日本製鉄によるUSスチール買収劇など、米国の動向は話題が豊富ゆえ、さまざまな動機で選択された可能性があります。

図:質問3

出所:楽天DIのデータより楽天証券経済研究所作成
※四捨五入の関係で合計が100にならない場合がある

 質問3は、2024年年末の日経平均の予想価格を選択するものでした。選択肢は45001円以上、40001円~45000円、35001円~40000円、35000円以下、わからない、の五つで、参考として2024年3月19日の終値が4万0,003.60円である旨を記しました。

 また、アンケート実施時の日経平均はおよそ4万0,520円(3月25日から27日までの3日間の終値平均)でした。こうした状況の中で最も多く選択されたのが「40001円~45000円」(53.4%)でした。半数以上が年末の価格は今の水準を大きく割らず、少なくとも4万円台を維持すると予想したことになります。

 また、45001円以上が14.8%、35001円~40000円が20.6%であることを考えると、予想の中央からそれた場合は、上振れよりも下振れすることを予想する方が多いことが分かります。回答全体をまとめれば、年末の日経平均は足元とほとんど変わらず、あわよくば上昇するかもしれないが、下落リスクの可能性は排除できない、となるでしょうか。

図:質問4

出所:楽天DIのデータより楽天証券経済研究所作成

 質問4は、日本が元気になる策を尋ねました。どうすれば日本が元気になり、ひいては日経平均株価が上昇し得るかについて、自由記入で尋ねました(128文字以内)。文字が大きければ大きいほど、その単語の出現頻度が高いことを意味します。

 最も多く出現した単語は「減税」でした。次いで「消費税」でした。多くの投資家の皆さまは日本が元気になる策を、税金の分野に見いだせると考えていることがうかがえます。物価高やさまざまな不安が山積する中で、税金の額が増えることは、元気になれない要因になっていると考えられます。

 仮に減税が進んだ場合、可処分所得が増え、それだけ日本全体のお金の巡りがよくなり、日本が元気になることが期待されます。

 税金の分野への言及に次いで、「賃金」「少子化対策」「中小企業」「投資」「政治家」「国民」などの出現頻度が高くなりました。「賃金(≒賃上げ)」は減税と同じ可処分所得を増やす要因です。物価高が続いていることもあり、賃上げも日本を元気にするための策になり得ます。

 人口動態の大規模な変化への対策である「少子化対策」「中小企業」の賃上げを伴った景気回復(大企業だけが元気になっても日本は元気にならない)、「国民」の間に広まりつつある「投資」活動のさらなる加速、「国民」を向いて仕事をする「政治家」などもまた、日本を元気にするために欠かせない要因です。

 ここまで、「今、日本株を売りますか?」というテーマで行った各種質問の回答結果をまとめました。今後もさまざまなテーマを用意し、個人投資家の皆さまのお考えを伝えていきます。