為替DI:4月のドル/円、個人投資家の予想は?

楽天証券FXディーリング部 荒地 潤

 楽天DIとは、ドル/円、ユーロ/円、豪ドル/円それぞれの、今後1カ月の相場見通しを指数化したものです。DIがプラスのときは「円安」見通し、マイナスのときは「円高」見通しで、プラス幅(マイナス幅)が大きいほど、円安(円高)見通しが強いことを示します。

出所:楽天DIのデータをもとに筆者作成

 DIは「強さ」ではなく、「多さ」を測ります。DIは、円安や円高の「強さ」がどの程度なのかを示しているわけではありませんが、個人投資家の相場観が正確に反映されていると考えるならば、DIの「多さ」は同時に「強さ」を示すことになります。

「4月のドル/円は、円安、円高のどちらへ動くと予想しますか?」

 楽天証券がドル/円相場の先行きについてアンケート調査を実施したところ、個人投資家の68%が「円安/ドル高」に動くと予想していることが分かりました。円安見通しは前月の72%に比べて減少しました。 

出所:楽天DIのデータをもとに筆者作成
※四捨五入の関係で合計が100にならない場合がある

 円安見通しから円高見通しを引いたDIはプラス36になりました。前月はプラス44でした。DIのプラスは3カ月連続となりました。

 ドル/円は3月27日のFX市場で、対ドルで151.97円と、2022年10月につけた151.94円を超え、1990年7月以来およそ34年ぶりの円安水準をつけました。円安相場は4月も続くと予想する個人投資家は、全体の7割近くを占めました。

 ただ、1カ月前のアンケート時に比べると若干だが円安予想は減っています。ドル/円にそろそろ天井感が出てきたと見る個人投資家も増えているようです。

出所:楽天DIのデータをもとに筆者作成

日本は17年前から変わったのか?

 日銀はマイナス金利を解除することを決定し、2007年2月以来となる利上げに踏み切りました。しかし、日本は17年前に比べて何か変わったのでしょうか。変わったかもしれませんが、良くなったとは断言はできません。

 むしろ悪化しているかもしれません。日本の対GDP(国内総生産)比債務は約250%まで膨れ上がりました。2007年の約180%、2013年のアベノミクス開始時の220%よりも増えています。

 都合のいいことに、日銀も政府もアベノミクスが何だったのか忘れてしまったようです。日本経済の再構築と銘打たれたアベノミクスは、経済成長を加速させ長期的な潜在成長率を引き上げることを目的に掲げ、外国からの投資を呼び込み、国内雇用を増大することで日本の財政は劇的に改善するはずでした。

 インフレ率2%も、高度で高速な経済成長のアウトプットという位置づけであり、それ自体が目的ではありませんでした。

 現在のインフレは、日銀ではなくロシアのプーチン大統領が引き起こしたものです。そこに企業が利益を上乗せしてさらに高くしました。日銀は自ら作り出したものではないインフレを最大限に利用して政策を変更しました。

 アベノミクスの世界では、企業は働き手を奪い合うようになり、需要主導による所得増加が実現するはずでした。現実はどうかというと、物価高に追いつかせるためのいわば供給主導による所得増加が行われているにすぎません。2024年のベア平均は5.28%と伸びましたが、食料品の平均値上げ率19%には追いついていません。

 日本は「2025年問題」に直面しています。「2025年問題」とは、国民の5人に1人が後期高齢者(75歳以上)という超高齢化社会を迎える時代において労働力不足や医療費増加が爆発的に加速する問題を指します。

 日本では第二次大戦後のベビーブーム世代の最後が75歳に達し最初が80歳になる一方で、人口は16年前の2008年にピークを迎え、2010年からは急激な人口減少が続くと予測されています。我が国はいわば、人口不均衡の最悪の局面を迎えようとしているのです。

 日本人の貯蓄意欲は高く、投資意欲は低いといえます。一方、インフレを支えてきた円安も、FRBが利下げに踏み切った後も続くと保証されるわけではありません。日本はなにも変わっていないように思えます。「こんな時代にするために俺たちは頑張ってきたんじゃない!」

ユーロ/円

 楽天証券がユーロ/円相場の先行きについてアンケート調査を実施したところ、個人投資家の64%が「円安/ユーロ高」に動くと予想していることが分かりました。前月は65%でした。

出所:楽天DIのデータをもとに筆者作成
※四捨五入の関係で合計が100にならない場合がある

 円安見通しから円高見通しを引いたDIは、プラス28になりました。円安/ユーロ高見通しは、前月のプラス30に比べてやや少なくなりました。

出所:楽天DIのデータをもとに筆者作成

豪ドル/円

 楽天証券が豪ドル/円相場の先行きについてアンケート調査を実施したところ、個人投資家の62%が「円安/豪ドル高」に動くと予想していることが分かりました。円安見通しは前月の70%に比べて少なくなりました。 

出所:楽天DIのデータをもとに筆者作成
※四捨五入の関係で合計が100にならない場合がある

 円安見通しから円高見通しを引いたDIは、プラス24になりました。

 円安/豪ドル高見通しは、前月のプラス40から大きく減りました。

出所:楽天DIのデータをもとに筆者作成

今後、投資してみたい金融商品・国(地域)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト 吉田 哲

 今回は、毎月実施している質問「今後投資してみたい金融商品」で「国内株式」と「外国株式」を選択した人の割合に注目します。各質問の選択肢は、ページ下部の表の通り、13個です(複数選択可)。

図:「国内株式」と「外国株式」を選択した人の割合の推移

出所:楽天DIのデータをもとに筆者作成

 2024年3月の調査で、「国内株式」を選択した人は65.59%、「外国株式」は42.70%でした。上図の通り、2022年序盤以降、国内株式は上昇、外国株式は下落し、2023年秋以降、国内株式は下落、外国株式は上昇傾向にあります。

 2022年序盤というと、同年2月に勃発したウクライナ危機によって拍車がかかったインフレを退治するために、米国で利上げが本格化したタイミングです。一方で、このころも日本は緩和的な策を維持していました。急激な金融引き締めが行われている米国中心の株式を選択する方が減り、緩和が続いている日本の株式を今後投資してみたいと選択する方が増えていました。

 そして2023年の秋以降、利上げのタイミングを模索し始めたことを機に日本を選択する人の割合が低下、逆に利下げのタイミングを模索し始めた米国は上昇しました。

 こうした動向から、多くの投資家の皆さんは、投資対象を選択する際にその投資対象に強く影響を及ぼす国の中央銀行の方針に注目していることがうかがえます。投資家の皆さんにとって、中央銀行が緩和的な策を講じている国の株式の方が有利に見えやすいのだと考えられます。

 緩和的な措置の一つである低金利の状態は、個人や企業の資金調達が活発化します。低金利の方がお金を借りやすいためです。そして資金調達が活発化すると、景気回復期待が強まります。緩和的な金融政策は景気回復期待、ひいては株価上昇を連想させます。

 先月、日本銀行はマイナス金利政策を終了することを決定しました。決定直後、関連する要人から緩和的な状況を続ける旨の発言があったものの、基本路線である金融政策の正常化に向けて、今後は徐々に引き締め的になっていくと考えられます。

 逆に米国は、利上げムードは昨年12月のFOMC(米連邦公開市場委員会)で終了し、現在は利下げに関するタイミングや規模についての議論が進んでいます。直近で要人より利下げを急がない旨の発言があったものの、あくまでその発言はタイミングに言及しているにすぎず、やはり根本的には利下げの方針に変わりはないようです。

 今後、利上げなど引き締め的な方針が強まって国内株式を選択する人の割合が低下し、利下げなど緩和的な方針が強まって海外株式を選択する人の割合が上昇するかもしれません。

 引き続き日米の中央銀行の動向、そしてこれらに影響を受け得る「国内株式」「外国株式」を選択する人の割合の推移に、注目していきたいと思います。

表:今後、投資してみたい金融商品 2024年3月調査時点(複数回答可)

出所:楽天DIのデータをもとに筆者作成

表:今後、投資してみたい国(地域)2024年3月調査時点(複数回答可)

出所:楽天DIのデータより筆者作成