はじめに

 今回のアンケート調査は2021年1月25日(月)~1月27日(水)の期間で行われました。

 2021年相場のスタートを切る1月の日経平均は2万7,663円で取引を終え、月足ベースでは3カ月連続の上昇となりました。前月末終値(2万7,444円)からの上げ幅は219円と小幅にとどまったものの、月間の値幅(高値と安値の差)自体は1,977円と比較的大きくなりました。

 あらためて月間の値動きを振り返ると、大発会からの数日間は、国内の新型コロナウイルス感染拡大に対する懸念や、米ジョージア州の上院議員の決選投票の動向をにらんで弱含みとなっていましたが、その後は「ブルーウェーブ」となった米新政権や、企業決算などへの期待で上値を試す展開となり、日経平均は2万9,000円まであとわずかに迫る場面も見られました。

 以降は、2万8,000円台半ばでのもみ合いがしばらく続き、堅調な展開でしたが、月末にかけては米個人投資家による一部の投機的な動きへの警戒感をきっかけに売りが優勢となり、値を消す展開へと転じていきました。

 このような中で行われた今回のアンケートですが、6,600名を超える個人投資家からの回答を頂きました。日経平均と米ドル/円の見通しDIは、それぞれ「株高・円安」の結果となり、月末の株安局面が反映されていないとはいえ、ポジティブなムードが優勢の見方が続きました。

 次回もぜひ、本アンケートにご協力をお願いいたします。

日経平均の見通し

楽天証券経済研究所 シニアマーケットアナリスト 土信田 雅之

「見通しの改善が続くも、上値は重いか」

 今回調査における日経平均の見通しDIの結果は、1カ月先がプラス16.51、3カ月先はプラス6.87となり、ともに前回調査の結果(それぞれプラス3.81、マイナス0.48)から大きく改善しました。

 回答の内訳グラフで細かく見ていくと、弱気派の割合が1カ月先で17.37%(前回は24.05%)、3カ月先で24.24%(同29.63%)となっており、弱気派の減少が目立っています。前回調査から、さらにDIの改善傾向が続いた格好です。

出所:楽天DIのデータより楽天証券経済研究所作成
出所:楽天DIのデータより楽天証券経済研究所作成

 ちなみに、1カ月・3カ月ともにDIの値がプラスとなるのは、昨年(2020年)の9月調査以来になります。

 この時は翌10月の日経平均が弱含む展開となりました。さらにさかのぼって、昨年の5月や2019年10月、そして2018年9月も同様に、1カ月・3カ月のDIがともにプラスだったのですが、いずれも翌月の日経平均が下落しています。あくまでも過去のデータに限った話ではありますが、特に今回は調査後の株式市場が下げ足を早めただけに、少し不安を覚えてしまいます。

 今後の展開を想定する上で最大のポイントになるのは、日米ともに「下げ切らない強さ」を幾度となく見せてきたこれまでの相場を揺るがしたのが、新型コロナウイルスでも企業決算でもなく、米個人投資家による一部の投機的な取引と、それに伴う状況だったという点です。

 SNSなどを通じて連携した個人投資家が、空売り残高の多い銘柄に集団で買いを仕掛け、空売り残高を積み上げていたヘッジファンドに損失を発生させて圧力をかける手法によって、ターゲットとなった銘柄の株価が本来の実力とはかけ離れるほどに急上昇し、実際にヘッジファンドが損失を抱え、買い戻しや追加担保の確保に迫られる事態となっています。

 こうした事態は、一部の銘柄による局所的な動きであり、「相場への影響は一時的」という見方が多いようですが、さまざまな論点や問題、課題が浮き上がってきました。

 具体的には、個人集団がファンド勢に打ち勝ったという事例が発生したことで、市場のバランス・オブ・パワーに変化が生じ、これまでの投資手法が見直される可能性があることや、そもそも今回の個人投資家の行動が法令違反にあたるのか、個人の大量の注文によって証券会社の取引システムの障害が相次いで発生したことによる機会損失、個人投資家に対してネット証券が取引制限を実施する一方で、ファンド勢は通常通り取引できたことによる不公平感などです。

 さらに、損失を抱えたヘッジファンドが資金を確保するために他の銘柄を売却するなど、他の銘柄にも影響が出ているほか、投機的な値動きを敬遠する投資家の株式市場離れ、そして、こうした事態を生み出す遠因となった金融緩和自体に対する批判、今回の事象を契機に新たな取引規制が設けられるなども考えられ、思ったよりも影響が長引く可能性があります。

 いずれにしても、目先で反発する場面があったとしても、過熱感と今回の投機的な売買による混乱の記憶が結び付きやすくなり、そこから積極的に上値を追う展開になりにくくなってしまうことも考えられ、しばらくは神経質な値動きを意識しておく必要があるのかもしれません。

今月の質問「ポイントで投資ができるのを知っていますか?」

楽天証券経済研究所 根岸 美知代

【今月の質問1】 ポイントを使って投資ができることを知っていますか。

出所:楽天DIのデータより楽天証券経済研究所作成

【今月の質問2】 ポイントを使って投資したことはありますか。

出所:楽天DIのデータより楽天証券経済研究所作成

 ポイント投資を「したことがある」方が約6割、「したことがない」方が約4割でした。

 ポイント投資の内訳は、「投資信託」52.57%、「国内株式」4.09%、「その他」1.51%でした。「その他」の中には、ポイントを使って「投資信託・国内株式両方に投資した」「バイナリーに使用」「暗号資産(楽天ウォレット)に投資した」という方もいらっしゃいました。「ポイントを使った投資はしたことがない」は、41.83%でした。

「その他」コメントには、「やってみたいが、どうやってポイント投資するか分からない」「やってみたいが実践しておらず。マニュアルほしいです」というご意見がございました。

 そもそもポイント投資とはどういうものなのでしょう⁉

 楽天証券のポイント投資は、楽天グループを利用して貯まった楽天ポイントを使って、楽天証券で投資ができるサービスです。投資信託、国内株式、そしてバイナリーオプションの投資ができます。

 こちらから、楽天ポイントを使っての楽天証券ポイント投資のやり方診断ができます。

 すでに、ポイント投資の設定を行っている方は、ここからポイント投資のできる商品の投資のやり方動画がご覧いただけます。

 投資信託のポイント投資のやり方動画はこちら

 国内株式のポイント投資のやり方動画はこちら

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【今月の質問3】 2020年は、NISAまたはつみたてNISAを利用しましたか。

出所:楽天DIのデータより楽天証券経済研究所作成

 昨年、「NISA(ニーサ:少額投資非課税制度)」または「つみたてNISA」を利用した方は、約7割、「どちらも利用していない」方は、約3割でした。 

 ポイント投資を「知っている」方と「知らない」方との関係をみると、「つみたてNISA」をしている方のほとんどがポイント投資を「知っている」という結果となりました。

出所:楽天DIのデータより楽天証券経済研究所作成

 今回もたくさんのご意見をありがとうございました。

為替DI:2月のドル/円、個人投資家の予想は?

楽天証券FXディーリング部 荒地 潤

 楽天DIとは、ドル/円、ユーロ/円、豪ドル/円それぞれの、今後1カ月の相場見通しを指数化したものです。DIがプラスの時は「円安」見通し、マイナスの時は「円高」見通しで、プラス幅(マイナス幅)が大きいほど、円安(円高)見通しが強いことを示しています。

出所:楽天DIのデータより楽天証券経済研究所作成

「2月のドル/円は、円安、円高のどちらへ動くと予想しますか?」

出所:楽天DIのデータより楽天証券経済研究所作成

 楽天証券が先月末に実施した相場アンケートの結果によると、回答を頂いた個人投資家6,663人の38%(2,552人)が、2月のドル/円は「ドル安/円高」に動くと予想していることがわかりました。1月は53%が円高を予想していました。

ドル高/円安」は最も少ない25%(1,662人)で、残りの37%(2,449人)は「動かない(わからない)」という答え。

 昨年6月以来ずっと多数派を占めてきた円高派はここに来て減っているのですが、まだ円安派に転向する踏ん切りがつかない投資家も多いようです。とりあえず今月の相場展開を眺めて決めるか、というスタンスでしょうか。

イエレン財務長官とドル安

 バイデン新政権のもとで財務長官に就任するFRB(米連邦準備制度理事会)前議長のイエレン氏は、「ドルの価値は市場によって決定されるべきであり、自国の輸出を有利にするためにドル安を求めることはしない」と述べ、為替操作に断固反対する立場を明らかにしました。トランプ前大統領のドル安誘導政策と決別したという意味では、「ドル高志向」と受け取れます。

 だからといって、米国が長期的なドル安傾向に歯止めをかける政策をとるのかというと、そうではない。むしろその逆です。

 イエレン財務長官は、コロナ禍から一刻も早く米経済を立ち直らせるには「大胆な行動(Act Big)」が必要であるとして、バイデン大統領の大型景気刺激策を応援する立場。お金が必要とあれば、米50年債の発行も検討するということです。

 そしてFRBは超緩和路線を継続。ゼロ金利を続けて物価が一時的に2%を超えてもFRBは利上げしない。ずっと先の話を心配するより、まずは米経済を「ホット」にすることが大事だとパウエルFRB議長は語ります。

 バイデン政権の景気刺激策、イエレン財務長官のドル高政策、そしてパウエル議長のゼロ金利のトリオによって米国が経常赤字(貿易赤字)と財政赤字の「双子の赤字」の拡大方向へ進んでいることは明らか。双子の赤字の増大は、将来的に深刻な経済危機を誘発することになり、投資家の深刻なドル離れにつながるリスクをはらんでいます。

 米国の政策は、ドル高ではなくドル安。為替操作はしない。しかし市場によって決定されるドルの価値は安くなります。

バイデン大統領とドル安

 トランプ前大統領の4年間で、アメリカ社会の分断はこれまで以上に深刻になったといわれています。2021年1月6日、トランプ氏の支持者が大挙して連邦議会に乱入したことは、分断を象徴する出来事として長く米国民の記憶に残るでしょう。

 しかし、米国の政治もまた分断されています。米大統領選挙後の米議会は、共和党と民主党の政治の対極化が進みました。バイデン大統領の政治運営を困難にしているのは、議会における両党の勢力が拮抗(きっこう)していること。米下院において民主党は過半数を維持していますが、選挙で議席を減らしました。上院の議席は共和党と同数で、紙の差一枚(ハリス副大統領一人)の有利でしかない。バイデン新大統領は、ありとあらゆる問題で共和党からの攻撃に直面するだけでなく、民主党内部の左派や中道派が満足するような調整役も果たさなくてはいけない。

 バイデン政権は、まずはコロナ対策を最重要課題として取り組み、続いてインフラ投資に焦点を当てると予想されています。増税法案については、年内にインフラ投資とパッケージにして提出される可能性が高い。景気刺激策について共和党は、金額が大きすぎると反対。増税は、規模とその対象範囲で民主党内部をまとめることができるのか。米政治の分断化はドル安です。

出所:楽天DIのデータより楽天証券経済研究所作成

 楽天証券の相場アンケートによると、27%の個人投資家が2月のユーロ/円は「ユーロ安/円高」に動くと予想しています。1月は37%でした。

ユーロ高/円安」に動くは、最も少なく18%。最も多かった回答は「動かない(わからない)」の55%。昨年末から年頭にかけてあれほど勢いのあったユーロ上昇に急に陰りが見えて、戸惑いを感じる個人投資家が多いようです。

出所:楽天DIのデータより楽天証券経済研究所作成

 楽天証券の相場アンケートによると、22%の個人投資家が2月の豪ドル/円は「豪ドル安/円高」に動くと予想しています。1月は29%でした。

「豪ドル高/円安」に動くは、19%。最も多かった回答は相変わらずの「動かない(わからない)」で59%。

 1月のドル相場のなかでの豪ドル/円は、豪ドル安と円安の動きに相殺して方向感に欠けました。

今後、投資してみたい金融商品・国(地域)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト 吉田 哲

 今回は、毎月実施している質問「今後、投資してみたい国(地域)」で、「アメリカ」と「日本」、を選択したお客さまの割合に注目します。

 当該質問は複数回答可で、選択肢は、日本、アメリカ、ユーロ圏、オセアニア、中国、ブラジル、ロシア、インド、東南アジア、中南米(ブラジル除く)、東欧、アフリカ、特になし、の13個です。

図:質問「今後、投資してみたい国(地域)」で、「アメリカ」、「日本」を選択したお客さまの割合 ※複数回答可 ※日本は、2016年5月より選択肢に追加

出所:楽天DIのデータをもとに筆者作成

 2021年1月の調査で「アメリカ」を選択したお客さまの割合は67.10%、「日本」を選択した人の割合は39.01%でした。グラフのとおり、「アメリカ」の67.10%は、一時的に高水準を維持した2016年序盤や、直近で最高を記録した昨年8月の65%を超え、2008年10月の統計開始以来の最高となりました。

 英国のEU離脱をめぐる国民投票が行われた2016年6月に、世界的に懸念が拡大して、同割合は急低下しました。しかしその後、トランプ氏が米大統領に就任し(当時)、さまざまな期待を振りまき、“トランプ・ラリー”と呼ばれた米国における株価上昇が発生しました。これに乗じるように、同割合は、上昇し始めました。

 昨年11月に米大統領選挙でバイデン氏が勝利した後も、バイデン氏が政権運営を良い方向に導く期待が増幅したり、米大統領選挙とほぼ同じタイミングで新型コロナに有効とされるワクチンが複数登場したりしたため、米国の主要株価指数は大きく上昇しました。これに伴い「アメリカ」を選択する人の割合は、さらに上昇しました。

 2016年6月以降、“トランプ・ラリー”、そして“バイデン・ワクチン相場”などにみられる米国株の上昇が、回答者にとって「アメリカ」を選択する大きな動機になっていると、考えられます。そしてこの点に加えて、もう一つ、大きな動機があると、筆者は考えています。

 米国株“ブーム”です。米国株投資が“ブーム”化している点が、「アメリカ」を選択する、強い動機になっていると、考えられます。株価上昇だけでも同割合は上昇する可能性があるわけですが、ブーム化したことが、上昇に拍車をかけていると考えられます。

 グラフのとおり、同割合は2010年1月から2016年5月まで、上昇しました。この期間(2010年1月から2016年5月まで)と現在は、米国株が上昇しているという点は同じですが、この期間は、米国株はまだブーム化していませんでした。以前になくて今ある要因、それが米国株の“ブーム化”です。

 足元、2016年の水準を超えている要因の一つに、以前になくて今ある“ブーム化”が挙げられると、考えられます。もしそうであれば、今後、ブームがますます過熱感を帯びれば、ますます、「アメリカ」を選択する人の割合が上昇する可能性があります。

 引き続き、「今後、投資してみたい国(地域)」で、「アメリカ」を選択したお客さまの割合に注目していきたいと、思います。

表:今後、投資してみたい金融商品 2021年1月調査時点 (複数回答可)

出所:楽天DIのデータより筆者作成

表:今後、投資してみたい国(地域) 2021年1月調査時点 (複数回答可)

出所:楽天DIのデータより筆者作成