1月に注目したい新興株の動き

 昨年2020年のマザーズ指数は3月の年間安値が527ポイントで、10月の年間高値が1,368ポイントでした。終わってみれば年間で33%も上昇しましたが、その展開は誰もが予想し得ないものでした。コロナショックで527ポイントまで急落することも、コロナラリーで安値から指数が2.5倍以上になることも…。常識が通じなさそうな世界になっているなか、理屈を持ち込むのもアレですが、理屈的には1月は12月より需給条件は良くなります

 まず、昨年末まで粛々と続いた「損出し売り」が終わること。節税目的で一度手放した銘柄を、新年以降に改めて買い直す投資家も多いと知られています。あとは、12月にラッシュとなったIPOがないこと(2021年の第1号IPOは2月5日予定)。12月IPOに吸い上げられた個人投資家マネーも、徐々に既存のマザーズ銘柄へ戻ってくるはずです。

 ただし今年の場合、1月の新興株にとっての最大の焦点が“緊急事態宣言の再発動”に急きょ決定しました。これをどう見るか?という難題があります。大発会4日の午前中、菅首相がコロナ感染の再拡大を受け、1都3県での緊急事態宣言の発令を検討していることを明らかにしました。この日のマザーズ指数は前日比+2.1%となり、日経平均株価の▲0.7%をアウトパフォーム。初動としては、“緊急事態宣言は買い”でした。

 これは、前年4月7日~5月25日の緊急事態宣言が、マザーズ急騰の起爆剤になったトラックレコードが残っているため。巣ごもり需要が発生するEC関連、オンライン対応が進むことに伴うDX関連の銘柄比率が他市場よりも圧倒的に高いことが理由です。4日の初動で起きたのも、前回の焼き直しを想定したロングショート。ロング側は東証1部ではエムスリーやメドピア、ブイキューブ、オイラ大地など、ジャスダックでは出前館など、マザーズでは主力株全般で、ショート(空売り)側はANAやJALなど空運株、JR大手など陸運株、そして飲食関連株全般でした。

 この動きが長期化するなら、マザーズ市場にとってはバラ色の1月相場になるはずですが…前回と違う点が結構あります。まず、ワクチンの接種が進んできていて、日本でも2月下旬にも接種開始になるという話が出ており、コロナ収束期待銘柄であるワクチン関連株も同時進行で盛り上がっていること。そして、前回よりも緊急事態宣言の要請内容が限定されそうなこと。さらには、目先的に米長期金利が上昇するリスクがあること(5日のジョージア州の決選投票次第で、大統領選と上下院の両方を民主党がとる“ブルーウェーブ”が実現した場合)。

 一概に、緊急事態宣言の再発動でマザーズは楽観ムード、とは言えないわけで…。ニュースフローをチェックしながら、マーケットと照らし合わせ、随時対応していくしかない意味で“難題”なわけです。また、前回の緊急事態宣言は、マザーズ指数600ポイント程度の水準で発動されましたが、今回は1,200ポイント台。マザーズ市場の時価総額でいえば、昨年4月7日が4兆6,068億円だったのに対して、1月4日時点では9兆7,248億円です。

「あのとき大きく上がったから、今回も」という期待が生まれる一方で、前回の2倍以上のエネルギーが必要ということは考えておくべき。それでいえば、巣ごもり需要やDX実需(会員数増など)があまりに早く発生し、短期間で業績が良くなり過ぎたマザーズ銘柄を多数輩出しました。会員数や業績のモメンタム鈍化が示されたときに、バリュエーションを切り上げた主力銘柄群がどう反応するか…も警戒されるところです。心配症が過ぎるかもしれませんが、回りを見ながら、情勢に合わせながら短期勝負のスタンスが無難だと思います。