(2)欧米の主要企業の業績見通しに悪影響を与えはじめた

 新型肺炎の影響が欧米に飛び火し、足元の金を含む貴金属相場を上昇させる要因となっている事例があります。

図:NYダウと上海総合指数(1月2日から24日まで)

出所:各種データ元より筆者作成

 2月3週目以降、新型肺炎の感染源である中国の株価指数の一つである上海総合指数は反発色を強め、春節前の急落する直前の水準まで戻ってきています。一方、NYダウ平均株価の下落が目立っています。

 また、以下は、欧州の株価指数の値動きです。

図:欧州の主要な株価指数の動き

出所:各種データ元より筆者作成

 2月3週目の後半から下落が目立ち始め、翌週2月24日には前日比、米国の主要株価指数を上回る、4~5%程度の下落となりました。先述のとおり、イタリアでの新型肺炎の感染が急速に広がる中、その他の欧州各国においても、不安心理の高まり、実体経済へマイナスの影響が懸念されていることがうかがえます。

 2月12日に米アップルが2020年1-3月期の売上高見込みを引き下げたのは序章に過ぎず、中国と関りが深い欧米の企業は、少なくとも1‐3月期の業績見通しの下方修正は避けられない状態にあるとみられます。

 資金供給や金利引き下げなどの中国政府による緩和的な措置により、上海総合指数が反発色を強めている一方、欧米では新型肺炎のマイナスの影響が大きくなってきていると見られます。2月3週目以降、新型肺炎の感染者数において、中国以外における増加数が、中国における増加数を上回ったことと一致します。

 欧米に新型肺炎が飛び火した具多的な事例を2つ、確認しました。2月3週目に、金の国際的な価格の指標となるドル建て金が主に売買されている欧米で、(1)新型肺炎の感染者、同肺炎による死者が増え始めて不安心理が急速に強まり、(2)主要企業が売上高の下方修正を余儀なくされるなど実体経済にマイナスの影響を与え始めた結果、金価格が上昇したと考えられます。

 2月の2週目までのような、新型肺炎の影響範囲が、アジアが中心だったことで、欧米のドル建て金相場が目立った上昇にならなかった状況が、一変した訳です。もはや新型肺炎は、欧米にとっての対岸の火事ではなくなったと言えます。

 個人的には、新型肺炎によって米国で死者が出た場合、マーケットに悲観的なムードが生じる可能性があると感じています。この点も合わせて、引き続き、各種データを注視していきたいと思います。