前途多難な減産継続。次の注目点は2019年2月に公表される進捗データ

制裁猶予期間中のイランの生産増加懸念

 筆者が考える今回の決定事項における懸念点は、制裁猶予期間中のイランの生産増加懸念です。

 現行同様、減産免除国があると報道されていますが、減産免除国が生産量を増やせば、OPEC全体、引いては減産体制全体の生産増加の要因になるため注意が必要です。現行の減産免除国はリビアとナイジェリアの2カ国でしたが、たびたび原油の生産量増加が報じられてきました。

 イランへの制裁再開はトランプ大統領が中心に行っていますが、日本など8カ国への原油輸入は2019年5月3日まで認められ、その間イランは原油増産が容認されています。
イランは11月5日の制裁再開を前に、原油生産量を急激に減らしてきました。それだけに、減産を免除されたことをきっかけに、2019年5月3日までの生産量が増加する可能性があります。

 また、イランに生産上限を設けなかった(減産を免除した)ことが、イランの減産免除の要請を受けたと報じられていますが、トランプ大統領を忖度して、制裁を猶予した米国と足並みを合わせた面もあります。

カタール脱退による数字のトリックに注意

 2019年1月でOPECを脱退するカタールの生産量の扱いが不透明です。カタールは2018年10月時点で日量およそ60万バレルを生産しています。

 報じられるOPECの生産量のデータにおいて、2018年12月分まではカタールを含み、2019年1月以降の分はカタールを含まないとなれば労せずして全体の削減目標の半分、OPECの削減目標の4分の3を達成することになります。

 この場合、カタールは減産に参加しない非OPEC国となっただけに過ぎず、世界全体の供給量が減少するわけではないため、減産継続が需給バランスの引き締めや、在庫の削減に貢献するかどうか不透明になります。

 2016年11月の現行の減産を決定した総会でインドネシア(日量70万バレル程度生産)が脱退しましたが、このときもこのインドネシアの扱いが不透明なまま減産が始まりました。

産油国に減産疲れか

 今回の減産の懸念点としてイランの増産の可能性について触れましたが、カタールの脱退による数字上のトリック、先述の事前に駆け込み増産で減産の基準を引き上げてきいた点からは、できるだけ生産量を削減せずに(痛みを伴わずに)、減産をしているように見せるかという点に注力している可能性は否定できません。

 その意味では、減産参加国の減産にかける想いは決して強いとは言えないと筆者は考えています。これまでおよそ2年間、減産を継続してきた国々であり、減産疲れを起こしている可能性もあります。

 また、今後の減産体制をめぐる時間の流れは以下のようになるとみられます。

資料2:適用期間等の延長となった減産の今後について(各種報道より筆者作成)

2018年12月31日:現行の減産終了

2019年1月1日:新体制(24カ国)で、2018年10月比合計120万バレルの減産開始

2019年4月(日付は未定):OPEC定時総会およびOPEC・非OPEC閣僚会議

2019年5月3日:イラン石油再制裁、猶予期限到来(翌日より石油制裁再開)

2019年6月30日:今回継続を決定した減産が終了

減産を履行しているかを示す各国の生産量のデータは、2019年1月分は1月末から2月中旬、2月分は2月末から3月中旬…というタイミングで公表される

 

 実際に今回決めた削減量を守っているかどうかは、初月の2019年1月については2019年1月末から2月中旬にかけて、海外主要メディアや各機関が公表する1月の産油量のデータを見て確認することになります。

 また、4月のOPEC定時総会およびOPEC・非OPEC閣僚会議については、開催時期が年に2度開催するOPEC定時総会は、通常5月末か6月はじめ(年央)と11月末か12月はじめ(年末)であるものの、この年央のタイミングを4月にしたことは、トランプ大統領を忖度し、5月3日で猶予期限を迎えるイラン石油制裁を考慮してのことと考えられます。