<今日のキーワード>

 日銀は7月末の会合で『金融政策』を一部変更し、事実上金融緩和を強化しました。これは2013年4月以降、黒田総裁が導入してきた大胆な金融緩和が、いまだ物価上昇に繋がっていないことに対応したものと言えます。加えて、長期に及ぶ金融緩和により、市中の銀行の収益性が低下したり、多額のETFの買入れを通じた株価形成への影響などの“副作用”が強まっているとの指摘があり、これらの軽減を図ったものと考えられます。

 

【ポイント1】ETFの買入れ額を見直し

日経平均株価連動型の減額により、値がさ株への影響は小さくなると考えられる

 日銀は現在、上場投資信託(ETF)を年間6兆円のペースで買入れています。7月末の金融政策決定会合では、このETFの買入れ額の配分が変更されました。日経平均株価連動型ETF(TOPIX(東証株価指数)、日経225、JPX日経400)は3兆円から1.5兆円へ減額、TOPIX連動型ETFは2.7兆円から4.2兆円へ増額されました。

 日経平均株価の構成比率は、上位25銘柄で約半分を占めています。これら構成比率上位銘柄は株価単価の高い値がさ株が多く、日銀による日経平均株価連動型ETFの買入れによる影響が指摘されていました。今回の日経平均株価連動型ETFの減額は、こうした値がさ株への影響の緩和に配慮されたものと見られます。

 

【ポイント2】長期金利の上下変動を容認

金利の上昇余地を探る展開が続く可能性

 日銀は声明文で、長期金利の操作目標である10年物国債金利を現状のゼロ%程度で維持しつつ、経済・物価情勢等に応じて「上下にある程度変動しうる」としました。また、黒田総裁は会合後の記者会見で、長期金利は0.2%程度の変動を容認すると発言しました。

 このため金融市場では、長期金利の上昇余地を探る展開となりました。米欧の中央銀行が『金融政策』の正常化へ向けてシフトしていることもあり、市場が日銀のスタンスを試す形で長期金利が従来よりも高い水準で推移する可能性があります。

 

【今後の展開】導入されたフォワードガイダンスは低金利の維持に言及

 日銀は今会合で、将来の金融政策見通しを示すフォワードガイダンスを導入し、「現在のきわめて低い長短金利の水準を維持する」としました。消費者物価の前年比は1%近辺で推移するなど、日銀が目標とする2%の物価安定の目標達成には、当面時間を要すると考えられます。このため、強力な金融緩和は継続される見込みで、『金融政策』の一部変更による “副作用”への対応は限定的なものにとどまる見込みです。