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 5月10日に行われたインドのカルナタカ州議会選挙で、モディ首相率いる与党・インド人民党(BJP)は大敗し、最大野党の国民会議派(INC)が単独過半数を獲得しました。来春に実施されるインドの『総選挙』を控え、盤石とみられたモディ政権の先行きにやや不透明感が出てきました。ただ、過去を振り返ると、『総選挙』の年はすべて株高となっており、基本的に『総選挙』は株式市場にポジティブな材料といえそうです。

【ポイント1】カルナタカ州議会選挙で与党が大敗

 5月10日に行われた南インドのカルナタカ州の議会選挙(定数224議席)で、最大野党のINCが前回(2018年)から56議席増の136議席を獲得して単独過半数に達し、躍進しました。一方、与党のBJPは38議席減の66議席に後退し、州政権を失うことになるなど、大敗を喫しました。

 昨年12月の西部グジャラート州の議会選挙では、BJPが事前の予想を上回る勝利を収めるなど、モディ政権は盤石とみられていました。モディ首相への高い支持はあるものの、BJPのヒンズー教に肩入れする政策への反発などが与党敗北の背景とみられます。

 ただ、今回の選挙におけるBJPの得票率は36%とINCの43%と大きな差がないことや、地域の特性もあるため、国政選挙である『総選挙』の政治リスクが全国レベルで高まるかはまだわかりません。その点で、年内に実施される予定で規模の大きいマディヤ・プラデーシュ州の議会選挙(第一党はBJP)などの結果が注目されます。

【ポイント2】『総選挙』に向けた景気刺激策が見込まれる

 今回の選挙ではモディ首相がBJPの候補を応援するために現地を訪問していましたが、有権者にはあまり響かなかった模様です。このため、モディ政権は今後実施される州議会選挙をにらんで、選挙対策を講じてくるとみられます。

 貧困層が多いインドでは、補助金支給などが選挙対策として用いられることが想定されます。モディ政権は、来年の『総選挙』に向けて、有権者からより多くの支持を得るために、2023年下半期に追加の財政政策を打ち出す可能性が高いとみています。

【今後の展開】来春の『総選挙』を控えた株式市場は堅調な展開が期待される

 ここで、『総選挙』と株式市場の関係を過去のデータから検証すると、『総選挙』は株高という関係がみて取れます。インドの代表的な株価指数であるSENSEX指数は、過去40年、8回の『総選挙』があった年の年間騰落率はすべてプラス、騰落率の平均は+32%と、好調でした。また、『総選挙』の前年も、1998年、2008年を除き上昇しており、『総選挙』に絡んで株価は上昇する傾向が観察されます。なお、1998年や2008年はアジア通貨危機やリーマンショックという金融危機の影響を受けた年でした。

『総選挙』の年に株価が上昇しているのは、現政権が選挙を見据え、前年から景気刺激策を打つことや、選挙結果を受けて、次期政権の政策への期待感が高まること、政治的な不確実性が後退することなどが主な理由として考えられます。

 2024年春に実施が見込まれるインドの『総選挙』まで残り1年を切る中、モディ政権が追加の景気刺激策を打ち出す可能性もあり、インド株式市場は堅調な展開が期待されます。