ファンダメンタルより先に株価チャートに異変が現れることが多い

実際には私たち個人投資家がファンダメンタルの変化を知る前に、株価はそれを先取りして動くケースが非常に多いものです。好業績を理由に買ったのになぜか株価は下落、不思議に思っていると後日怒涛の下方修正によりさらに株価急落でもはやどうすることもできない、というケースは枚挙に暇ありません。でもそうした銘柄の株価チャートをみると、業績下方修正前に売りサインがはっきりと出ていることが多いものです。

もしこうした銘柄を、ファンダメンタルの変化を知った段階で損切りすると、時には買い値から30%、50%も下がった水準で売るはめになります。これでははっきり言って遅すぎます。

個人投資家がファンダメンタルの変化に気付く前に株価が反応することが多いことを踏まえれば、やはりプロより情報量の少ない個人投資家がファンダメンタル分析のみで株式投資をすることはリスクが高いと言わざるを得ません。

長期的な上昇相場でなければ損切りせず保有し続けても報われない

(2-2)の見解は、個人投資家は保有期間に制限がないのだから、株価が買値から下がったら損切りなどせず、いつまでも保有し続ければよい、という考え方です。 

確かにこの考え方は戦後~バブル崩壊前までの、長期的な右肩上がりの上昇相場であればあながち間違ってはいませんでした。しかし、バブル崩壊後長期間低迷する今の日本株では、10年、20年と保有し続けていても一向に株価が買値まで戻ってくれないのが現実です。「持ち続ければいつか株価は上がる」という言葉を信じて、30年も40年も持ち続けた結果、結局株価は買値よりはるかに低いままということにもなりかねません。「時間を味方にできるのが個人投資家の強み」とよく言われますが、長期的な上昇相場でなければ、保有すればするほど株価が下がり、時間は味方どころか敵になる恐れだってあります。

銘柄選びさえしっかり行えば損切りなど必要ないとはいうものの……

(2-1)と(2-2)の考え方に共通するのは、「銘柄の選び方」が重要という点です。つまり、将来の株価上昇が見込まれる銘柄を選んで投資しておけば、そもそも損切りなど必要ないという考え方です。

しかし筆者は、「将来の株価上昇が見込まれる銘柄」を見つけ出すことは相当レベルの高い個人投資家でないと難しいと思います。相場全体が下落基調なら、そのハードルはさらに高くなります。そもそも、いくら銘柄選びに完璧を期したつもりでも、下がるときは下がるのが相場です。

もちろん将来の損切りが不要になるような精度の高い銘柄選びを目指すことは望ましいこととはいえ、必要な時には損失が大きくなる前に損切りをすべき、というのが筆者の考えです。