損切りは必要? 不要? 対立する2つの見解

本コラムを以前からご覧いただいている方はご存知と思いますが、筆者は「損切り推進派」です。損切りの重要性を何度も繰り返し説明してきましたし、筆者自身、バブル崩壊から20年以上続く長期低迷相場の中、損切りのおかげで大失敗せずに生き残ってこられました。

しかしその一方で、「個人投資家は損切り不要」と主張される専門家の人も少なくありません。

こうなると、損切りはいったい必要なのか、不要なのか、果たしてどちらが正しいのかと個人投資家の方は混乱してしまうのではないかと心配しています。

損切り必要説と不要説、この2つの説にはそれぞれ根拠があります。それを理解しておけば、なぜ損切りに対して正反対の2つの説が存在するのかが分かってきます。そうすれば、皆さんも「自分は損切りをすべきかどうか」「もし損切りをしないのならば自分にとって何が必要なのか」を自ら考えることができるはずです。

損失を拡大せず、浅い傷で済ませるのが損切り推進派の論拠

まず、筆者のように損切りの必要性を強く主張する人を「損切り推進派(1)」、積極的な損切りは不要であると主張する人を「損切り消極派(2)」と分類します。

(1)の損切り推進派は、損失を不用意に拡大させないために、「買値から10%下落したら損切り」とか、「移動平均線を株価が下回ったら損切り」、「直近安値を下回ったら損切り」といったような主に株価チャート・テクニカル分析を用いた損切りルールを設定してそれを実行すべきという考え方です。

この考え方の根底には、「いくら努力して将来の株価上昇が見込まれる銘柄を選んで投資しても、株価が買値から大きく下がることは珍しくない」という実践に裏打ちされた事実があります。

つまり、いくら毎年のように業績を伸ばしている良い銘柄であっても、株価は下がるときは大きく下がるのです。「業績が良い」=「株価上昇」という式は必ずしも成立しないのです。

ファンダメンタルの変化を待って損切りしたのでは遅すぎる

(2)の「損切り消極派」はさらに2つのタイプに分けることができます。ファンダメンタルの変化を理由とする損切りならば容認する見解の人を「ファンダメンタルによる損切り容認派(2-1)」と呼ぶことにします。そして、どんな場合でも損切りは不要だという見解の人を「損切り不要派(2-2)」とします。

(2-1)の見解の人は、買値からの下落率や株価チャートを判断基準とした損切りルールに否定的で、テクニカル分析は役に立たないし使うべきではない、あくまでもファンダメンタルに変化が生じた場合に損切りを考えるべきと主張します。

つまり好調なファンダメンタルを根拠として銘柄選びをした(例えば増収増益が続き、今後もその傾向が続くと期待される銘柄へ投資)ものの、業績が下方修正され、今後しばらく業績が低迷しそうだということが判明した時点で、投資した前提条件が崩れたために損切りを行うという方法です。

一見すると筋が通っているようにみえます。しかし、個人投資家が知識や経験、情報を大量に持つプロ投資家と同じ土俵で戦う株式市場では、実践的には失敗の可能性が高い方法と言わざるを得ません。