米GDP改定値とPCE週内に発表、「年内利下げなし」観測台頭も

 年内に米国の利下げなしという見方も一部にはあるようです。今週30日には米2024年1-3月期GDP(国内総生産)改定値(速報値は前期比年率1.6%増)や1-3月期コアPCE(速報値、3.7%上昇)、31日には4月PCEコア・デフレーター(3月は前年同月比2.8%上昇)が発表されます。予想を上回れば、6月のFOMCに影響を与え、年内利下げなしの見方が増えてくるかもしれません。逆に下回れば、タカ派色が弱まる可能性もあるため注目です。

 GDP改定値は1.3%増の予想となっており、速報値の1.6%増を下回る予想となっているのは気になるところです。米長期金利の上昇は景気がいいから上がっているというよりも、インフレを警戒して金利が上がっているという側面が強いとの見方が増えてきています。インフレ上昇、金利上昇は将来の景気を悪化させることにつながるため、足元の景気は堅調でも今後の景気見通しには注意が必要かもしれません。

 28日に発表された米5月コンファレンスボード消費者信頼感指数は予想を上回りましたが、先行きを示す期待指数は景気後退リスクを示唆する水準の80を4カ月連続で下回っています。

 インフレ懸念を抱きながら、高金利が長引けば長引くほど、米中小企業や中小銀行、家計の低所得者層などにじわじわと影響を与えてくることが予想されます。現在は堅調な米国経済も夏を過ぎると様子が変わり、FRBの政策にも影響を与えてくるかもしれません。GDP改定値は過去の数字ですが、そういう観点から重要な意味がありそうです。

 投機家動向として注目される米国CFTCの5月21日時点の円のネット・ショートポジションは、14万4,367枚と前週から1万8,185枚増え、4週間ぶりに拡大しています。4月下旬に17万9,919枚まで膨らんだ後、急速に縮小していましたが、ここにきてFRB幹部から早期利下げに慎重な発言が相次いだことで、日米金利差が開いた状態が続くとみて、再び円キャリー取引を増やしてきているような動きです。

欧州利下げペース鈍くなるとの観測で、対ユーロ・ポンドも円安

 円安を後押ししている要因は米国の利下げ慎重姿勢だけではありません。5月に入って、対ユーロや対ポンドでも円安が進んでいることが円売りを支えているようです。対ユーロでは1ユーロ=170円を超え、対ポンドでは1ポンド=200円を超えてきており、16年ぶりの円安水準となっています。

 背景には、23日に発表されたユーロ圏のPMIが52.3と、好不況の分かれ目である50を3カ月連続で上回り1年ぶりの高水準となるなど、欧州経済の景気底入れ期待が高まっていることがあります。

 ECB(欧州中央銀行)の利下げは6月との見方が大勢ですが、その後の利下げペースが鈍くなる可能性があるとの見方も出てきています。

 英国も、突然決まった7月4日の総選挙の影響により、利下げペースが鈍くなるとの見解が示されています。米国、欧州、英国ともに利下げペースが鈍くなり、日本の利上げは続くのかどうか不透明な状況では、円売りを止める判断は後倒しになることが予想されます。

 日本の10年債利回りは29日に1.065%を付け、2011年12月以来の水準まで上昇しましたが、ドル円は反応していません。マーケットは指標や金利、政策というよりも日米欧の当局に対する信頼性の違いに影響を受けている印象です。