裁定買い残高に表れる海外投機筋の動き 

 ひとくくりに外国人投資家といっても、いろいろな種類があります。大ざっぱな分類ですが、日経平均先物を中心に短期売買を繰り返す外国人「投機筋」と、日本株の現物を中心に売買する「長期投資家」(欧米年金基金、中東オイルダラー、アジアなどのソブリンウェルスファンドなど)があります。

 日本株の短期的な動きに一番影響が大きいのが、日経平均先物を中心に売買する投機筋の動向です。その投機筋の動きを、一目で見られるデータがあります。それが、東京証券取引所の「裁定買い残高」の変化です。

 詳しい説明は割愛しますが、投機筋が日経平均などの先物を買い建てると「裁定買い残高」が増加し、投機筋が日経平均先物を売ると「裁定買い残高」が減少します。

<日経平均と、裁定買い残高の推移:2021年7月1日~2024年5月20日(裁定買い残高は5月10日まで)>

出所:QUICKより作成

 上のグラフをご覧いただくと、日経平均は裁定買い残が増える時に上昇し、減る時に下落していることがよく分かります。投機筋の日経平均売買が、日経平均の短期的な動きを決めていることが分かります。

 裁定買い残高は、上のグラフでは、5月10日までのデータしか出ていません。ピーク(3月29日の2兆5,487億円)から減り続けて、5月10日には1兆8,841億円となっています。日経平均がその後、上昇していることを考えると、その後、裁定買い残はまた増加している可能性もあります。短期的な相場変動を理解するためには、裁定買い残の増減も見ていく必要があります。

日本株の投資判断に「コバンザメ戦略」が有効

 日本株は割安で、日経平均は4万円を超えて長期的に上昇していくと判断しています。

 ただし、外国人の売買動向によって、短期的には調整する可能性もあります。時間分散しながら割安な日本株を買い増ししていくことが、長期の資産形成に寄与すると考えています。

 外国人がここからさらに日本株を買ってくるか売ってくるか、知るすべはありません。私がファンドマネジャーの時は、外国人の売買を予測するのではなく、外国人の動きを見ながら、なるべく、それにぴったりついていくことを心掛けていました。

 それを、大型の生き物に吸着しておこぼれを食べるコバンザメにちなんで、「コバンザメ戦略」と呼んでいました。情けない表現かもしれませんが、それが短期的な相場動向を間違えない最も堅い戦略です。

 外国人の売買動向について、今後分かることがあれば、本欄で報告いたします。

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