需要面から見た見通し

FRB金融政策とBTC相場

出典:Bloombergより楽天ウォレット作成

 需要要因でまず重要となるのはFRBの金融政策だ。従来からBTCとドルの発行量とは相関していたが、2020年ごろから米機関投資家がFRBのドル乱発へのヘッジとしてBTCの購入を始めて以降、その関係を増しており、2023年の上昇の多くはFRBの金融政策で説明できる。

 FRBは2023年7月を最後に利上げを打ち止めしている。そして早ければ2024年3月、特に5月以降利下げに踏み切るのではないかと市場は予想されている。これはBTCの上昇要因だ。

1990年以降の米FF金利と最後の利上げから最初の利下げまでの日数 平均9カ月

出典:Bloombergより楽天ウォレット作成

 ただ、ここで注意したいのはFRBが利下げする理由だ。今のところFRBが利下げするロジックはインフレ率が下がると、実質金利が上がるので、引き締め過ぎを防ぐため、名目金利を調整するというものだ。このロジックだと、FRBが利下げするといっても限定的だし、ドルの減価へのヘッジとしてBTCを購入する米投資家のニーズはさほど膨らまない。

日米ベースマネー比較:法定通貨の乱発

出典:Bloombergより楽天ウォレット作成

 一方、想定以上に米景気が冷え込み、例えばXXXショックのような状況が到来、FRBが金融緩和を再開する場合にはBTCは大きく上昇するかもしれない。上は米ドルの発行残高(ベースマネー)の推移だが、コロナショック後の無制限緩和で膨張したドル発行残高は金融政策の正常化で伸びこそ止まっているが、ほとんど減ってはいない。

 この状況で次の景気後退が到来し、再び量的緩和に移行すれば、次こそはドルの減価につながりかねないと、米投資家のヘッジ需要が膨らみ、その一部がBTCに流入する可能性がある。

 もう一つの大きな材料は米大統領選挙だ。今回のETF承認にあたって、民主党系の2委員は反対に回り、共和党系の2委員は賛成、本来はバリバリの民主党員であるゲンスラーSEC委員長が、グレースケール裁判の敗訴を受けて渋々賛成に回ったことで承認された。

 おそらく、あの状況で委員長が強硬に反対したら、さらなる訴訟リスクやウォール街からの罷免要求などで持たないという判断だったのかもしれない。委員長が、ETFは承認したが、BTCを承認したわけではないと批判を続けているのは、自らの後ろ盾と目されるエリザベス・ウォーレン米上院議員など、民主党左派への配慮かもしれない。

 この様に暗号資産を巡って米政界での党派対立が深くなるにつけ、大統領選挙や上下院選挙の結果がBTC市場に与える影響は大きくなっている。分かりやすく言えば、共和党が勝てば現委員長は更迭、民主党なら再任ないし同氏が財務長官に就任し、暗号資産業界への締め付けが一層厳しくなる。

 一例を挙げれば、ウォーレン議員が主張するように、個人が管理するウォレット業者やマイナーなどにも銀行と同程度のマネーロンダリング対応が義務付けられ、米国内の暗号市産業界は大きなダメージを負いかねない。

 面白いことにこの両材料、米景気後退の可否と米大統領選挙の行方は密接に関連している。すなわち、景気が後退すれば、共和党が勝ちやすく、BTCが買われやすい。逆に、景気が持てば、民主党が勝ちやすく、BTCは買われにくい、という構図だ。

 ローンチ後、Sell the Fact(うわさで買って事実で売れ、という投資格言)による売り圧力がかかっているETFの影響も無関係でない。

 詳しくはトウシルに投稿した「ビットコインETF承認でなぜ上がる?」をご参照いただきたいが、景気が後退してFRBが金融緩和に転じ、より多くの投資家がドル減価に対するヘッジの必要を感じた方が、ETFによる投資家のすそ野拡大効果が効いてくると思われる。

 逆にETF承認自体がBTCを買う理由にはならず、こうした経済状況の前提なしにETF承認で自動的にどれだけ買い需要が入るか、といった議論は相場の予想としてはあまり有効でないと思われる。

ビットコイン相場見通し

各党の勝利とは、景気状況が明確で選挙結果も大統領・上下両院を制する想定。経済状況が中途半端で大統領および上下院がねじれるケースでは、相場もどっちつかずとなり、上記の間で決着するイメージ。
シナリオ 2024年末 BTCピーク
民主党勝利
米景気堅調
2025年4月から本格上昇
700万円(5万ドル@145円)
2025年10月
1,800万円(12.5万ドル@145円)
共和党勝利
米景気後退
2024年11月から本格上昇
1,300万円(700万円+300万円×2カ月)
2025年4月
2,500万円(17.5万ドル@145円)

 こうした状況を踏まえてシナリオを立てると民主党が勝利した場合、大統領選挙までは5万ドル(700万円)近辺での取引が続き、大統領選挙後も本格上昇は後ずれ、2025年4月ごろから10月にかけて本格上昇、ピーク12.5万ドル(1,800万円)に到達するイメージで、2024年末は700万円と予想する。

 一方、共和党が勝利する場合、現時点ではこちらの可能性がメインシナリオと考えるが、11月の選挙までは5万ドル(700万円)近辺で推移するが、大統領選挙直後11月から本格上昇開始、2025年4月までの6カ月でピーク17.5万ドル(2,500万円)に到達するとして、年末は本格上昇の2カ月分で+600万円、1,300万円と予想する。

 なお、各党の勝利とは景気状況が明確で、選挙結果も大統領・上下両院を制すイメージで、経済状況が中途半端で大統領および上下院がねじれるケースでは、相場もどっちつかずとなり、上記の間で決着するイメージか。