米景気後退感強まり、年末1ドル=145円の円高も!?

 11月23日(木)の感謝祭、24日(金)のブラックフライデーから27日(月)のサイバーマンデーまでのインターネット通販での売上高は好調だったようですが、その間に発表された他の経済指標はあまり良い結果ではありませんでした。

 24日に発表された米国11月PMI(購買担当者景気指数)は、製造業PMIが10月の50.0から49.4に低下する一方、サービス業PMIは10月の50.6から50.8に上昇し、強弱混在となった結果、総合PMIは50.7と横ばいになりました。

 しかし、雇用指数が10月の51.3から49.7に低下し、2020年6月以来3年半ぶりに50割れとなり、10-12月期の景気減速予想を裏付ける内容となりました。

 また、27日発表の米10月新築住宅販売件数(前月比5.6%減)や米11月のダラス連銀製造業景況指数は予想を下回りました。新築住宅販売価格(中央値)は前年同月比17.6%減の40万9,300ドルと大きく下落し、1964年の統計開始以来最大の下落率となりました。

 また、ダラス連銀製造業景況指数は前月より19.9ポイント下落し、3カ月連続で悪化しました。マイナスは2022年5月から19カ月連続です。

 これらの指標を受けて米金利が低下し、米10年債利回りは4.4%を割れ、1ドル=148円台半ばの円高となりました。先週、150円には届かず、150円が重たくなったドルは米長期金利の低下とともにじりじりと円高に動き、今週に入って28日には147円台、29日には146円台の円高になりました。

 このように11月後半に発表された指標は弱い数字が続いており、景気後退感が強まれば、「景気減速・インフレ低下→金利低下→株高」といった市場心理が、「景気減速→企業収益悪化→金利低下を伴った株安」に変わり、米株上昇の息切れとともに年末にかけて1ドル=145円に向けてさらに円高に動くかもしれません。

米地区連銀のベージュブックと、PCE価格指数に注目!

 まずは、今週29日(水)に発表されるFRBの地区連銀経済報告(ベージュブック)に注目です。「地区連銀経済報告」とは米国にある12地区の連邦準備銀行が、それぞれ管轄する地区の経済状況をまとめた報告書です。

 表紙の色がベージュ色であるため「ベージュブック」と呼ばれています。年8回開催されるFOMCの2週間前の水曜日に発表され、金融政策を変更するかどうかの判断材料に用いられます。今回のベージュブックは12月のFOMCの判断材料になるため、各地区の景気や物価、労働環境がどのように報告されるのか注目です。FOMCの材料となるだけにFOMC前に一波乱あるかもしれません。

 そして30日にはFRBがインフレ指標として注視している米10月PCE価格指数が発表されます。もし、物価上昇が鈍化した場合、来年の利下げ開始時期が前倒しされるとの期待が高まります。

 ちなみに、先行きの政策金利の織り込み度を示す米国CME(シカゴ・マーカンタイル取引所)のFEDウオッチによるとFRBの12月利上げ見送りは97%、利下げは来年3月から期待が高まり42%、5月では49%となっています。6月から5月利下げ期待へと前倒しになってきていますが、今後、3月にさらに前倒しされるかどうか注目です。