今週8月14日(月)~18日(金)は前半がお盆休みの期間のため、通常、市場参加者が減り、株価の値動きも低調な「夏枯れ相場」になることが多いです。

 しかし、今週がそうなるとは限りません。

 というのも、日本や米国発の重要経済指標の発表が相次ぐからです。

 15日(火)朝には日本の2023年4-6月期の実質GDP(国内総生産)の速報値、米国の7月小売売上高が日本時間の夜には発表されます。

 16日(水)には、7月下旬に0.25%の利上げ再開を決めた米国のFOMC(連邦公開市場委員会)の議事録の公開が控えています。

 18日(金)には日本の7月CPI(全国消費者物価指数)も発表されます。

 先週の日経平均株価(225種)の10日(木)終値は前週末比280円高の3万2,473円と、米国債格下げショックで急落した先々週(7月31日~8月4日)の下げ幅566円の一部を取り返しました。

 米国の金利上昇による日米金利差の拡大で、外国為替市場の円相場が週初の1ドル=141円台から10日(木)には一時144円台まで円安になったことも好感されました。

 原油高や好決算を受けて石油資源開発のINPEX(1605)が前週末比14.4%高となるなど、鉱業や石油・石炭製品セクターが週間の業種別ランキング上位となり、自動車株、鉄鋼株など半導体関連以外の外需株も好調でした。

 一方、米国株は、10日(木)発表の7月CPI(消費者物価指数)が予想を下回ったことで一時上昇しましたが、その後は10年国債の金利が4.1%台後半まで上昇したことを嫌って、生成AI(人工知能)ブームで株価が割高になった半導体株を中心に下落しました。

 機関投資家が運用指針とするS&P500種指数は前週末比0.31%安で、2週連続の下落。

 ハイテク株が集まるナスダック総合指数は前週末比1.9%安と、かなり大きな下落率になりました。

 日本が祝日の11日(金)のニューヨーク外国市場では一時1ドル=145円台まで円安が加速しており、今週も円相場の動向が株価に大きな影響を与えそうです。

 週明け14日(月)の東京株式市場の日経平均は前週末の米半導体株安が重荷となり、反落して始まりました。午前中の取引では円安を支えに一時上昇に転じる場面もありましたが、半導体関連株の下落やアジアの株安などで下落幅が広がり、この日の終値は連休前の10日終値比413円安の3万2,059円でした。

先週:日本株は好決算株が急騰!米国株は長期金利上昇で下落

 先週の日本株はピークを迎えた2024年3月期第1四半期(2023年4-6月期)決算で、好決算や通期見通しの上方修正、増配などを発表した個別企業の株が大きく買われる明るい雰囲気に包まれました。

 スキンケア商品が好調で今期の通期業績を上方修正したロート製薬(4527)は10日(木)終値が前週末比25.9%高。

 アジア圏のスポーツシューズ販売が好調なアシックス(7936)が2023年12月期の業績と配当額を上方修正して、10日終値が前週末比21.7%上昇。

 業績の底入れが見えてきた企業の株価が急騰するのは、全体相場が好調な証拠です。

 2023年4-6月期の純損益が黒字転換したコカ・コーラ ボトラーズジャパンホールディングス(2579)の10日終値が前週末比23.5%高したのが典型例でしょう。

 一方、米国株は軟調な展開でした。

 10日(木)発表の米国7月CPIは前年同月比3.2%の伸びと、前月(3.0%増)から13カ月ぶりに伸び率が拡大しましたが、予想は下回ったことで株価は上昇。

 しかし、翌11日(金)発表の7月PPI(卸売物価指数)は前月比0.3%の伸び、前年同月比0.8%の上昇と、いずれも予想を上回る結果に。

 インフレ指標に関してはまちまちの結果だったため、米国の中央銀行にあたるFRB(連邦準備制度理事会)の高金利政策が長期化するのではないかという懸念が台頭。

 金利高止まりを嫌って、高速半導体メーカーのエヌビディア(NVDA)が週間で8.5%超下落し、フィラデルフィア半導体(SOX)指数が週間で5.0%安になるなど、株価が割高な半導体株の下落が米国株の足を引っ張りました。

 8日(火)には格付け会社ムーディーズが、米国の小・中規模の銀行10行の信用格付けを引き下げる動きもあり、銀行株も下落。

 米国の銀行システムには、国債価格の下落による含み損の拡大、コロナ禍以降の出社率低下でオフィスなど商業不動産の価格が下落していることによる貸し倒れリスク増加など、高金利が継続することによる経営不安がくすぶっています。

 またサウジアラビアの減産継続表明やオーストラリアのLNG(液化天然ガス)プラントでの労働争議の影響で、先週も原油や天然ガスの価格が上昇。

 資源価格高騰は物価の高止まり、金利の上昇に直結するだけに新たな懸念材料になりそうです。

今週:日本のGDPやFOMC議事録など材料満載!日銀の「大誤算」とは?

 今週は14日(月)にクラウド会計ソフトのフリー(4478)やオンライン医療サービスのメドレー(4480)など成長株や新興株が2023年4-6月期の決算を発表します。

 決算発表はそれで出尽くしとなりますが、15日(火)には2023年4-6月期の日本の実質GDPの速報値も発表。

 予想機関の平均値は自動車生産など外需が伸びて前期比年率3.0%増と、2023年1-3月期の二次速報値のプラス2.7%から伸びが加速しそうです。

 GDPの伸びが加速すれば、株価も素直に好感して上昇しそうです。

 10日(木)に中国政府が日本への団体旅行解禁を発表したことも、中国観光客の爆買いで潤いそうなインバウンド(訪日外国人)関連株には追い風でしょう。

 米国では15日(火)に7月の小売売上高や8月のニューヨーク連邦準備銀行製造業景気指数など景気に関する指標が発表されます。

 16日(水)には、7月のFOMCの議事録が公表され、0.25%の利上げ再開を決めた際にどんな議論が行われたか注目を浴びそうです。

 米国では先週10日発表の7月CPIが予想を下回ったことから、次回9月19~20日に行われるFOMCでは利上げが休止される、という見通しが優勢です。

 しかし、5日(土)にはミシェル・ボウマンFRB理事が「インフレ率を2%に押し下げるには追加利上げが必要になる可能性が高い」と発言。

 一方、8日(火)にはフィラデルフィア連銀のパトリック・ハーカー総裁が「来年には金利を引き下げることになるだろう」といった趣旨の発言を行い、株式市場もFRB高官の発言に一喜一憂して上下動する展開が続きました。

 来週の24日(木)~26日(土)には、世界中の中央銀行要人が集まって金融政策について講演を行う「ジャクソンホール会議」も控えています。

 16日に発表される7月FOMCの議事録で、利上げが7月で打ち止めではなく今後も続く可能性があるというタカ派的なトーンが確認されると、株価にとってはネガティブです。

 また、15日(火)には米国最大のホームセンター・ホームデポ(HD)、17日(木)には米国最大の低価格スーパー・ウォルマート(WMT)など、米国の個人消費の動向を占う小売企業の決算発表も予定されています。

 一方、日本でも株価を急変動させかねない経済指標が発表されます。

 それが18日(金)の7月CPI。

 前回発表の、変動の激しい生鮮食品を除く6月のコアCPIは前年同月比3.3%の上昇と高止まりしていますが、7月のコアCPIは前年同月比3.1%まで伸びが鈍化する予想になっています。

 しかし、最近は原油高の影響で国内でもレギュラーガソリンの店頭価格が全国平均で1リットル当たり180円超えの水準となり、12週間連続で値上がり。

 また、為替市場では米国の長期金利上昇で円安が止まらず、11日(金)のニューヨーク外国為替市場では一時1ドル=145円台に到達。

 これは日本銀行にとってはある意味、「大誤算」といえるのかもしれません。

 日銀は、7月28日(金)終了の金融政策決定会合で、短期から長期までの国債利回りが描く曲線を適正な水準に保つYCC(イールドカーブ・コントロール:長短金利操作)政策の柔軟化を表明。

 長期金利の指標である10年国債の金利変動幅の上限を実質的に0.5%から1%に引き上げる政策修正を行いました。

 このYCC政策柔軟化の裏には、輸入価格の高騰につながる急速な円安を食い止めたいという意向もあったはずです。

 しかし、8月1日の米国債格下げもあって、日米金利差が逆に広がり、円相場は急速な円安方向に振れています。

 今週も1ドル=145円台を超えて、なおも円安トレンドが続くようなら、政府・日銀の為替介入に対する警戒感が高まりそうです。

 18日発表の日本の7月CPIが予想以上に上ブレすると、植田和男総裁率いる日銀の量的緩和策に対する風当たりが強まる可能性もあり、ここまで日銀の量的緩和策を追い風に好調を持続してきた日本株にも悪影響が出るかもしれません。

 今週はお盆休みの時期ということもあって閑散相場になりそうですが、逆に少しの売買で相場が大きく動くため、外資系ヘッジファンドによる仕掛け売り的な動きも起こりやすくなります。

 米国の長期金利の動向、ドル/円相場、重要経済指標の発表などで相場が急変動するリスクが高くなるので注意が必要といえるでしょう。