今週の日本株は、17日(月)の米国株が2023年4-6月期の決算発表期待で続伸したことを受けて、連休明け18日(火)の東京株式市場は買い先行で始まりました。その後、上値を徐々に下げ午後に入ると一時下落、しかし、買い戻しが入り、反発して取引を終えました。

 先週、米国では12日(水)発表の6月CPI(消費者物価指数)や13日(木)発表の6月PPI(卸売物価指数)が市場予想を下回る水準まで鈍化しました。

 その好結果を受け、米国市場では景気や雇用が減速することなくインフレ克服に成功するソフトランディング(景気軟着陸)論が優勢を占め、機関投資家が運用指針にするS&P500種指数の14日(金)終値は前週末比2.4%高。4,500ポイントの大台に乗りました。

 巨大IT企業の影響が強いナスダック総合指数の14日終値も、前週末比3.3%高と大きく上昇。

 S&P500に比べて低迷していた、重厚長大産業の組み入れ比率が高いダウ工業株30種平均も、ヘルスケア株や金融株の上昇で前週末比2.3%高となり、年初来高値を更新。

 17日(月)も、この米国の主要3指数はそろって続伸しました。

 米国の主要3指数が絶好調にもかかわらず、日経平均株価(225種)の14日終値は前週末比2.8円高の3万2,391円と、ほぼ横ばいで終了。

 米国株に比べてはるかに見劣りするパフォーマンスの一因は、1ドル=142円台から138円台まで4円近く円高ドル安が進行したことです。

 4月以降、米国株を上回るほど力強い上昇が続いた日本株ですが、急速な円高や7月27、28日に控えた日本銀行の金融政策決定会合における金融緩和策の修正懸念もあり、明らかに勢いが弱くなっています。

 連休明け18日の東京株式市場の日経平均は前日の米国株高を受けて買い先行で始まり、東京エレクトロン8035やメガバンク株などが買われ、前週末終値より一時300円以上値上がりしました。

 しかし、上海や香港の市場の株安が伝わると上値を下げ、午後に入ると一時、下落に転じる場面もありました。しかし、相場の調整局面を狙った押し目買いが入り、終値は前週末比102円高の3万2,493円でした。

 今週は、絶好調の米国株にどれぐらいツレ高して上昇できるか、それとも米国株と逆行して下落するか、様子見の1週間になりそうです。

先週:CPI鈍化の米国株は「適温相場」入り。日本株は円高で横ばい。格差際立つ!

 先週は、物価高の鈍化で米国株の上昇が際立った1週間でした。

 12日(水)発表の6月CPIは前年同月比3.0%の伸びと、5月の4.0%増から大幅に低下。約2年ぶりの小幅な伸びになりました。

 変動の激しいエネルギーや食品を除いたコアCPIも、前年同月比4.8%の上昇と、5月の5.3%の伸びから鈍化。物価全体の3割を占める住居費など、高止まりが続くサービス価格も多くの項目で伸び率が低下しました。

 13日(木)発表の6月PPI(卸売物価指数)も前年同月比でわずかに0.1%の上昇と、約3年ぶりの低水準までインフレ率が低下。

 同日、アマゾン・ドット・コム(AMZN)が発表した11日(火)の「アマゾンプライムデー」セール初日の売上高が過去最高だったこともあり、物価高収束で、米国の旺盛な個人消費がさらに盛り上がる可能性も出てきました。

 米国市場では、経済を落ち込ませることなく、インフレ率のコントロールに成功する「完璧なディスインフレ」という言葉が飛び交うようになっています。

 また、経済が過熱せず冷め過ぎることもないため、安定した株高に期待できる「適温(ゴルディロックス)相場」の到来も話題にのぼっています。

 むろん、13日(木)にサンフランシスコ地区連邦準備銀行のメアリー・デイリー総裁が「インフレに対して勝利宣言するのはまだ早い」と発言するなど、7月25日(火)~26日(水)のFOMC(連邦公開市場委員会)で0.25%の再利上げが行われることは、ほぼ確実視されています。

 しかし、物価上昇の鈍化で「年内あと2回」とされていた利上げは7月の1回だけで終わる見通しが強くなっていることも事実です。

 日本株では、2023年3-5月期の営業利益が前年同期の約2.1倍となった「無印良品」の良品計画(7453)が前週末比21.7%高。

 同じく2023年第1四半期が大幅な増益基調だったイタリアン・ファミレスのサイゼリヤ(7581)が前週末比15.6%高するなど、外食やアパレル、スーパーなど内需系企業の株価上昇が目立ちました。

 一方、先々週に大株主が持ち株売却を発表して大幅下落した半導体メーカーのソシオネクスト(6526)が前週末比11.2%安と続落。

 年初から50%以上上昇していた半導体搬送装置のローツェ(6323)が前週末比9.7%安となるなど、4月以降、急上昇してきた株の下落が目立ちました。

今週:米国企業の決算発表が相場をけん引。日銀のYCC修正観測が重しに!?

 今週の日本株も、4月以降の上昇相場で上がり過ぎた株ほど利益確定売りが出やすい展開になりそうです。

 日本が祝日の17日(月)には、中国の2023年4-6月期の実質GDP(国内総生産)が前期比0.8%増と、2023年1-3月期の2.2%増を大きく下回り、景気回復が思うように進んでいないことが明らかになりました。

 しかし、17日の米国市場では、この悪いニュースも中国政府が新たな景気刺激策を打ち出すきっかけになるとポジティブにとらえられています。

 米国では、18日(火)に6月の小売売上高が発表。

 物価高でも雇用が安定しているため、米国では個人消費が旺盛です。その動向が分かる指標として注目されそうです。

 19日(水)には米国の6月住宅着工件数、20日(木)には中古住宅販売件数が発表になります。

 高金利で住宅ローン金利が跳ね上がっているにもかかわらず、米国の住宅販売は堅調な状況が続いています。

 今週の最大の注目はやはり、米国企業の2023年4-6月期の決算発表でしょう。

 18日(火)のバンク・オブ・アメリカ(BAC)や19日(水)のゴールドマン・サックス・グループ(GS)など、金融機関の決算発表が相次ぎます。

 19日には米国株の上昇を主導してきたハイテク株の一角、オンライン映画配信のネットフリックス(NFLX)や電気自動車のテスラ(TSLA)も決算発表。

 予想を上回る決算になれば、ますますハイテク株が上昇する展開に期待できそうです。

 S&P500はすでに4,500ポイント台に乗せ、2022年1月に付けた4,818ポイントの史上最高値更新まで、あと300ポイントに迫っています。

 一方、日本株にとって、米国の物価鈍化は悪材料になる面もあります。

 というのも、物価鈍化で米国の中央銀行に当たるFRB(連邦準備制度理事会)の利上げ停止が明確になると、日米金利差がこれ以上拡大しないことで、為替相場が円高方向に振れやすくなるからです。

 円高になるとドル建てで見た日本株が割高に映ることになり、外国人投資家から見た日本株の魅力が低下します。

 実際、外国人投資家の現物株と先物取引を合計した売買高は、6月第2週(6月12~16日)に売り越しに転じて以降、6月第4週(6月26~30日)まで3週連続で売り越し。

 7月第1週(7月3~7日)は4週間ぶりに現物・先物合計で570億円の買い越しとなりましたが、先週(7月10~14日)は売り越しに転じている可能性も多く、外国人投資家の日本株買いの勢いは明らかに衰えています。

 27日(木)、28日(金)に開かれる日銀の金融政策決定会合でYCC(イールドカーブ・コントロール、長短金利操作)政策を修正されるのではないかという観測も、日本株の頭を抑える重しになっています。

 YCC政策は短期から長期までの国債利回りが描く曲線を適正な水準に保つことを目指す政策ですが、長期金利の指標となる10年国債の金利変動幅の上限を現行の0.5%から引き上げるのではないかという見通しが台頭しています。

 今回の金融政策決定会合では、国内の物価高を背景に、2023年度の物価見通しを従来の1.8%上昇から2%台半ばまで上方修正する可能性が高いといわれています。

 物価見通しを引き上げるにもかかわらず、YCC政策を続けるのは難しいのではないかというのが、政策修正観測の理由です。

 そんな中、21日(金)には、日本の6月CPIが発表。

 市場では5月と同じ前年同月比3.2%の上昇になると予想されています。

 高止まりや上伸びする結果になると、7月末の日銀会合でYCC政策が修正される懸念が高まり、日本株が下落する可能性もあります。

 日本株が物価高を嫌って下落するというのは、これまで20年以上、物価下落が続くデフレに苦しんできたことを考えると、異例の事態です。

 ただ、本来、賃金上昇のともなう健全なインフレは日本経済が待ち望んできたもの。

 賃上げやインバウンド需要で国内消費の好調が続けば、長期的に見た場合、物価の上昇は日本株、特に内需株に対する絶好の買い場といえるかもしれません。

 しかし、7月末の日銀会合までは神経質な展開が続くことが予想され、上がるも下がるも米国株次第になりそうです。

 絶好調が続く米国株の急変にも注意が必要でしょう。