コロナまん延下で迎える春節。20億の民族大移動は経済効果につながるか

 昨年末、中国政府は3月5日に全人代を開幕すると公表しました。かなり早い段階での日程公表でしたが、「中国社会は大丈夫だ。我々には情勢を管理するだけの自信と能力がある」、そう国内外にアピールしたかったのでしょう。

 12月に大々的に推し進めた「ゼロコロナ」策の大幅緩和、あるいは事実上の撤廃を受けて、中国ではコロナ陽性者が一気に急増しました。「感染者ゼロ」を目指す政策から、集団免疫を形成するために感染をむしろ奨励するような劇的な環境の変化に、北京で暮らす日本人駐在員は「まるでジェットコースターに乗っているような気分」と表現していました。

 コロナと共存する「ウィズコロナ」どころか、コロナがまん延する「フルコロナ」、あるいは「コロナフリー」という前提で2023年を迎えた中国社会は、1月21日から春節休みに入り、延べ20億人が帰省のために移動するとされます。この期間、感染リスクは高まりますが、既に人口の7割程度が1巡目の感染を終えたともいわれる中、人の移動に伴う感染リスクの増大は、「フルコロナ」下の中国ではもはやクリティカルな問題ではないのかもしれません。それよりも、居住地での年越しを強要された昨年の春節に比べて、今年は例年の7割程度とはいえ延べ20億人もがあの広大な土地を、さまざまな交通手段を使って帰省し、家族とわいわいやるわけですから、それがどう経済効果、景気回復につながるかに焦点はシフトしていると見るべきでしょう。

 2023年の景気回復という意味では、先週のレポートでも扱いましたが、やはり不動産業界の「復活」が不可欠になると私は見ています。昨年、中国経済は消費、投資などあらゆる指標が低迷しましたが、その最たる分野が不動産でした。住宅の販売面積は26.8%減、売上高は28.3%減と大きく低迷。また、不動産開発を巡る資金調達額は25.9%減、うち国内借款が25.4%減、外資利用が27.4%減、自己資金が19.1%減という結果。3月の全人代で退任予定の劉鶴(リュウ・ハー)国務院副総理が昨年12月に「不動産は国民経済の支柱産業」と明言していますが、今年、不動産業界が中国経済の回復にどう寄与するかに注目です。