2023年1月4日(水)から取引開始となった日経平均株価(225種)は前年末比0.5%安と小幅下落で年初の取引を終えました。

 しかし、6日(金)に発表された米国雇用統計で平均時給の伸びが鈍化したことを受け、6日と9日(月)に米国株が急騰。

 3連休明けの10日(火)から13日(金)の日本株も反転上昇が期待できそうです。

先週:米国株は時給増の勢い弱まり急反発!FRBと市場の見解ずれ顕著に

 2023年の取引のスタートとなった1月4日(火)の大発会。

 日経平均株価は前年比末377円安に沈み、銀行、保険、証券を除く30業種が下落しました。

 1ドル=129円台まで進んだ円高に加え、iPhoneの生産停滞が懸念されたアップル(AAPL)が世界で1社だけ維持していた時価総額2兆ドル(約264兆円)の大台を割り込むなど、米国ハイテク株の下落が影響しました。

 米国のFOMC(連邦公開市場委員会)が昨年12月13~14日に0.5%の利上げを決定した際の議事録が公表されました。

 その内容は「2023年中に利下げはしない」、「インフレ率が2%まで下がると確信できるまで金融引き締めを続ける」という強硬なものでした。

 本来なら株価が急落してもおかしくない状況でしたが、米国株はなぜか反発。

 多くの機関投資家が運用の指針にするS&P500種指数は4日、0.75%上昇しました。

 翌5日(木)、給与計算代行会社ADP(オートマティック・データ・プロセッシング社)が発表した民間部門の12月新規雇用者数は、前月比23.5万人増と予想を大幅に上回りました。

 同日発表の新規失業保険申請件数も前週比で減少し、人手不足の継続が明らかに。

 強すぎる雇用情勢は賃金、ひいては物価の上昇につながります。

 そのため、5日の米国株は、S&P500種指数とダウ工業株30種平均、ナスダック総合指数の3指標がともに1%以上も下落しました。

 市場の関心が過熱する米国の雇用に注がれる中、6日(金)には注目の12月の雇用統計の数字が出ました。

 景気動向を敏感に示す非農業部門雇用者数は前月比22.3万人の増加と予想より強いものでした。

 しかし、インフレに直結する平均時給の伸びは前月比0.3%にとどまり、予想をわずかに下回りました。

 市場はこれをかなり大げさに好感。6日は3指数ともに急反発しました。ただ、9日(月)はナスダック総合指数以外のほかの2指数は反落しました。

 毎年、年初の株価の動きはその後、1年を通じて市場に大きな影響を与えるものです。

 2023年1月第1週の米国株で際立ったのは、米国の中央銀行にあたるFRB(連邦準備制度理事会)がFOMCの議事録で「年内の利下げはなし」と明確に表明しているにもかかわらず、株高に振れたことです。

 市場がFRBに対し「きっとFRBは間違える」と、挑戦状を送り付けているかのような展開です。

 FRBが正しいのか、株式市場が正しいのか。

 2023年1月全体の株価の好不調で勝敗が決まりそうです。

今週:12日発表の米CPIでさらに続騰!?日本株は日銀政策巡る思惑に揺さぶられる?

 今週は9日(月)の米国株急騰を受け、10日(火)の日本株も大幅高で始まりました。

 どういった銘柄が勢いよく上昇したかどうかをチェックすると、今年の花形株を探す手掛かりになるかもしれません。

 10日 (火)夜には、スウェーデンの国際シンポジウムでのFRBのパウエル議長の発言に注目が集まりそうです。

 そして12日(木)には、いよいよ大注目の米国の12月CPI(消費者物価指数)が発表されます。

 前回の11月のCPIは前年同月比7.1%の上昇で5カ月連続の伸び率鈍化となり、米国株が一時的に反発上昇するきっかけになりました。

 市場は前年同月比6%半ばの伸びを予想しています。

 最近は当初、物価高の引き金だったガソリン、食品、自動車など、モノの価格高騰は沈静化の兆しが鮮明です。

 しかし、住居費をはじめ、サービス価格の上昇はまだ鈍化していません。

 人手不足で住宅、医療、娯楽、教育、輸送など、サービス産業での賃金上昇が続く限り、人件費の転嫁によってサービス価格が高止まりする恐れがあります。

 米国の雇用市場や平均時給の伸びに株式市場の関心が集まっているだけに、サービス価格の伸びが鈍化すれば、株価が急騰する可能性も十分にありえるでしょう。

 一方、予想以上に物価が高止まりすると、株価が勢いよく上がり過ぎた反動で再び急落する恐れも考えられます。

 日にちが前後しますが、10日(火)午前、日本全国のCPIの先行指標といわれる12月の東京都区部CPIが発表されました。

 生鮮食品を除くコアCPIは前年同月比4.0%上昇し、伸び率は40年8カ月ぶりの大きさとなりました。

 日本銀行は1月18日(水)に終了する次回の金融政策決定会合で、2022年度の物価上昇率を3%、2023、2024年度を2%前後に引き上げる見込みと報じられています。

 今後の物価上昇率の見通しが2%台に達すると、日銀の政策変更を巡る思惑が市場に広がるでしょう。

 為替市場で急速な円高が進んだり、日本株だけが急落もしくは伸び悩んだりする可能性もあります。

 むろん、今すぐ日銀が異次元緩和策やマイナス金利政策を停止するとは考えられません。

 世界中で広がった物価高に沈静化の兆しが出たら、2023年前半は中長期投資に向けて株を割安な価格で買う絶好のチャンス到来かもしれません。

 業績が安定し、配当利回りも高い大型の割安株だけでなく、2022年に下げ過ぎた成長著しいIT関連の中小型成長株などにも投資妙味がありそうです。