2023年の株式市場がいよいよスタートしました。

 2022年の日経平均株価(225種)は前年末比9.4%安、TOPIX(東証株価指数)は5.1%の下落で、ともに2018年以来、4年ぶりのマイナスでした。

 年明けの1月4日(水)から6日(金)の新春相場は、3日(火)に外国為替市場で一時1ドル=129円台まで円高が進み、米国の重要経済指標の発表も相次ぐことから、波乱の展開が続きそうです。

昨年:テスラ65%暴落!ハイテク株受難の一方、急騰する個別株も!

 2022年最後の1週間となった12月26日(月)から30日(金)の日本株は、資源価格の上昇や、中国政府が新型コロナウイルス感染封じ込めを目指したゼロコロナ政策を緩和したことなどを好感して、鉱業やインバウンド関連など前半は上昇しました。

 しかし、週後半は米国の長期金利上昇や中国でのコロナ感染者急増、米国や日本などによる中国渡航者の入国制限強化などで、ハイテク株、グロース(成長)株や旅行関連株を中心に下落しました。

 日経平均株価は前週比0.5%の小幅の下落で2022年最後の1週間の取引を終えました。

 2022年は「下げ相場だった」といえますが、同時にここ10年近く続いた「米国株最強」神話が崩れた1年でした。

 米国の3大株価指数はリーマン・ショックが起こった2008年以来の下落率になりました。

 石油株や銀行株など割安な重厚長大企業の比率が高いダウ工業株30種平均は前年末比8.8%の下落。

 ハイテク株の組み入れ比率が大きいS&P500種指数は19.4%安。

 ハイテク株中心のナスダック総合指数は実に33.1%の下落と、悲惨な結果になりました。

 ナスダック総合指数が大幅な下落となったのは、カリスマ経営者イーロン・マスク氏率いる電気自動車のテスラ(TSLA)の株価低迷が一つの原因です。

 同社の株は2022年の1年間で65%も下落。

 このほか、フェイスブック運営のメタ・プラットフォームズ(META)が64%安、高速半導体のエヌビディア(NVDA)も半値水準まで下げました。投資家の期待を少しでも裏切ると半値以下まで叩き売られる花形株の怖さを見せつけました。

 ただ、日本の個別株を見ると、石油資源開発のINPEX(1605)は39%超も上昇。

 防衛関連株の三菱重工業(7011)は前年終値の2倍近くに値上がり。

 2022年12月20日に長期金利を実質的に0.5%に利上げした日本銀行の決定を受け、金利上昇が追い風となる三菱UFJフィナンシャル・グループ(8306)は42%高。

 訪日外国人の入国規制解除で盛り上がるインバウンド関連株では、三越伊勢丹ホールディングス(3099)が69%高。

 2022年は下げ相場といわれる割に、大きく上昇した重厚長大産業の割安大型株が多数出現したことも特徴でした。

 2023年もインフレや金利上昇、インバウンド需要再開など、今の時流に乗った個別株投資に挑戦すると、いい投資結果につながりそうです。

今週:FOMC議事録で方向性決まる!?米雇用統計や円高に注意!

 米国では3日(火)から株式市場が再開。ダウ工業株30種平均は、昨年最後の取引となった12月30日の終値から反発して始まりましたが、インフレや高金利への不安から終値は0.03%安でした。ほかの2指数も下落しました。

 年初にもかかわらず、今週は米国発の重要経済指標が満載です。

 4日(水)には、全米供給管理協会が製造業の景況感を示す昨年12月のISM製造業景況指数を発表します。

 米国の製造業の指標はこのところ落ち込みが激しく、2023年前半に米国が景気後退に陥る懸念につながっています。

 同じく4日には、米政策金利の0.5%引き上げを決定した昨年12月のFOMC(連邦公開市場委員会)の議事録が公表されます。

 FOMC後の会見で、米国の中央銀行にあたるFRB(連邦準備制度理事会)のパウエル議長が、市場の金融緩和期待は時期尚早だと警告する発言をしたため、株価は急落しました。

 株式市場がFOMC議事録の発表にどんな反応を示すのかは、2023年年初の株価の方向性を決める重要な材料になりそうです。

 6日(金)には昨年12月の雇用統計も発表されます。

 米国では景気後退懸念が根強いものの、人手不足で雇用統計の数字だけは非常に強い状況が続いてきました。

 今回12月分の非農業部門雇用者数は前月比20万人増の予想ですが、それ以上の雇用者増や平均時給の伸びが続くと、株価にとっては悪材料になるでしょう。

 2023年の日本株にとっては、ここ10年間、株式市場を下支えする金融緩和政策をとり続けてきた日銀の政策変更や総裁人事も大きな波乱要素になりそうです。

 昨年12月20日には黒田東彦日銀総裁が突如、長期金利の実質利上げを発表し、株価が急落しました。

 同様の金融引き締め策が再び発動されると、株式市場に動揺が走りそうです。

 また、4月に退任予定の黒田氏に代わって誰が日銀総裁の座につくかも関心の的です。

 すでに候補者の実名などがメディアにも流れていますが、安倍政権の経済政策「アベノミクス」の影の立役者といえる黒田総裁の存在感があまりに大きかったため、誰が次期総裁になっても株高につながりそうにありません。

 逆に少しでも金融引き締めに積極的な人物が就任すると、株価急落につながる恐れもあります。

 2023年はうさぎ年。「卯(う=うさぎ)は跳ねる」といわれます。

 しかし、跳ねる前にはまず屈む必要があります。

 日本株は年初早々、乱高下の展開になる可能性も高いので注意が必要でしょう。