インフレ・金利上昇が懸念される間、バリュー優位が続くと考える理由

 2023年前半もバリュー優位が続く可能性があります。その理由は、以下2点です。

【1】バリュー・グロースのバリュエーション格差がいまだに大きい

 2021~2022年にバリュー優位が続いたとはいえ、まだ短期的なことです。2016年から2020年までの5年、グロース株ばかりが上がりバリュー株が低迷する時期が続いた結果、グロース株はかなり割高、バリュー株はかなり割安になっていました。

 グロース偏重の反動として、割安な株を見直す流れが始まっていますが、いまだにバリュエーション格差はかなり開いたままです。今しばらく、以下のイメージで示した、割安株相場が続くと予想しています。

成長株相場から割安株相場への転換(イメージ図)

出所:筆者作成

【2】「20世紀に逆戻り」の経済環境がしばらく続くと予想

 経済環境が一時的に20世紀に逆戻りしていることが、バリュー株復活の重要な要因となっています。今年話題になっているのは、米国のインフレ率が一時9%台まで上昇し、過去40年で最高になったことです。

 原油や天然ガスなど資源価格の上昇も話題となりましたが、それだけが原因ではありません。コロナ禍で米国政府・中央銀行(FRB[米連邦準備制度理事会])が、財政・金融の大盤ぶるまいをした弊害として、深刻なインフレが起こったと言えます。

 モノが不足し深刻なインフレが起こるというのは、古く20世紀の経済環境に一時的に逆戻りしていることを示します。物価が上がり、金利が上がるのは、20世紀の経済環境です。

 21世紀、特にリーマンショック後は、モノの値段も資源価格も金利も下がるのが当たり前となっていました。製造業では稼げない時代となる中、ネット関連やIT関連だけが成長する時代となっていました。

 そうした環境の中で、IT・ネット関連の成長株だけが買い上げられ、オールドバリュー株(金融株・資源関連株・製造業)は低迷し続けました。

 今、一時的に20世紀の投資環境に戻ったことで、バリュー株の業績が拡大し、株価が見直される局面に入っています。20世紀は人類がモノの豊かさを求めて努力した時代でした。

 モノが不足し、資源価格が上がると、インフレになり金利が上がり、それを見て中央銀行が金融を引き締めました。それと同じことが今、米国で起こりつつあります。

 過去に、日本株でバリュー株優位が長く続いた時は、いずれもインフレや金利が上昇した時でした。代表的なものに以下があります。

◆1980年代後半のバリュー相場

 円高と貿易戦争でグロース株(ハイテク株)がさえない中、内需中心にバブル景気が盛り上がり、バリュー株が活躍。

◆2000年代前半のバリュー相場

 金融株や重厚長大産業が、構造改革で復活。ブリックス(中国・インド・ブラジル・ロシア)といわれる新興国の成長加速で、資源価格が急騰、世界的にインフレ懸念が強まり、金利が上昇。

 以上の理由から、2023年前半、引き続きインフレ・FRBの利上げが警戒される環境下で、日本株市場で、バリュー株優位のパフォーマンスが続くと予想しています。