中国の激しい反発と解放軍による台湾包囲

 8月2日23時前(台北時間)、ペロシ氏一行を乗せた米国軍機が台北市の空港に着陸しました。中国政府は予想通り、準備していた一連の対抗、報復措置の実行に即座に移りました。

 ペロシ台湾到着を受けて、中国外交部、国防部、全国人民代表大会、全国政治協商会議、国務院台湾事務弁公室などがそれぞれ断固たる反対と強烈な抗議を示す声明文を発表。また、外交部謝鋒(シエ・フォン)副部長(中央次官級)が米国のニコラス・バーンズ駐中大使を深夜に呼び出し、反対と抗議を表明しました。

 これだけの機関がそれぞれ同時に声明文を発表するのは異例ですが、それでもこれらは「言葉」上の抗議。より重要なのは「行動」です。今回、中国側は即座に行動を起こしています。

 2日夕方、台湾総統府にサイバー攻撃があり、公式サイトが一時ダウン。ペロシ到着に合わせ、中国空軍の戦闘機「スホイ35」が台湾海峡を横断。また、中国政府は、台湾の100以上の食品企業に対して輸入禁止の措置を講じると発表。3日から実施します。

 2日夜以降、中国人民解放軍東部戦区が中心となり、一連の軍事演習を展開しています。台湾以北、南西、南東の空海域における合同空海演習訓練の実行(台湾海峡で遠距離火力実弾射撃、台湾東部で通常ミサイルの試射など)が含まれます。同戦区の顧中(グー・ジョン)副参謀長によれば、「今回の合同軍事行動は、米国と台湾当局が台湾問題で取っている危険な行為に焦点を当てた必要な措置である」と説明した上で、軍事演習について詳細を語りました。

「東部戦区は多種の兵隊を体系的に編成し、全要素を展開し、合同封鎖を実行し、海への突撃、陸への打撃、制空作戦などをピンポイントで演習・訓練し、精密な武器による実弾射撃も実施する。武器装備の性能や軍隊の合同戦闘能力を全面的に点検することで、いかなる危機的事態にも対応できる準備を徹底して進める」

 加えて、中国人民解放軍は8月4日12時~7日12時(北京時間)、台湾を包囲するように、島の四方、六つの空海域で「重要な軍事訓練行動を行う。実弾射撃訓練も組む」との予定をすでに発表しています。その上で、「安全を確保するため、この期間、関連する船舶や飛行体がこれらの空海域に進入するのを禁止する」とも警鐘を鳴らしています。

 まさに、台湾に対して武力行使する「Xデー」に向けた実践訓練を、ペロシ訪台を機に前代未聞の規模と密度で実施するということです。ペロシ訪台の間、その後数日は、台湾周辺の空海域(日本の南西諸島を含む)における米中間の軍事衝突リスクという意味で、危険な時間が続くのは必至です。

 現状は「prelude to war」(戦争の序曲)とさえ修飾できると私は見積もっています。