台湾海峡で予断を許さない状況続く

 今後の見通しを考えていきたいと思います。

 冒頭の西安と香港在住の知人からのメッセージにも表れているように、ペロシ訪台が騒がれた8月2日、上海総合指数は2.26%安、香港ハンセン指数は2.36%安と、共に大引けで取引を終えています。同日、東京株式市場も反落(1.4%安)、ニューヨーク株式市場のダウ工業株30種平均も大幅続落。下げ幅は400ドルを超えました。

 主因はいずれもペロシ・ショックによる地政学リスクの高まりです。私が本稿を執筆している3日を含め、これから予断を許さない状況が断続的に展開されるのは間違いありません。

 ペロシ訪台が米中間の長期的関係や大局に残す禍根については慎重な議論が必要であり、現時点では時期尚早であるため、ここでは短中期的な不安要素について整理しておきます。

 まず短期的、これから数日間から1週間のスパンで見ると、前述したように、中国人民解放軍が台湾を包囲する態勢で前代未聞の軍事演習を展開します。この過程で、米国軍と局地的な軍事衝突を含めた突発事件が起これば、「全面戦争」に発展する可能性も否定できなくなります。当然、日本の自衛隊や国土、国民が巻き込まれるリスクも浮上してきます。混乱に便乗する形で、中国が台湾を武力で統一すべく一気に攻勢をかけてくる可能性も否定できなくなってきます。

 これが中期的、向こう数カ月間の見通しにつながっていきます。内政要因です。今回のペロシ訪台の背景には多かれ少なかれ、劣勢に立たされている11月の中間選挙を前に、対中政策、台湾問題でポイントを稼ぎたい民主党陣営の思惑が作用していると見るべきでしょう。そして、中国も秋(10月か11月)に5年に1度の党大会を控えています。習総書記にとっては再選がかかる極めて重要な政治イベントであり、それを前に、台湾問題という中国にとっての核心的利益において、安易な譲歩は決してできませんし、しないでしょう。

 そんな中、仮に米国や台湾当局が対中で継続的に挑発的な言動をとるようであれば、党内、軍内、世論に背中を押される形で、一気に台湾への武力統一に踏み切る可能性が高まるでしょう。そうなれば、米国側との軍事的対峙(たいじ)、衝突はより直接的、大規模、かつ予測不可能な展開を見せるのが必至であり、東アジア全体を混乱の海に陥れることでしょう。

 予断を許さないとはまさにこのこと、という心境で情勢を注視する今日この頃です。

マーケットのヒント

  1. 「ペロシ・ショック」は市場の大敵であり、不安要素は山積み
  2. 市場は中国が台湾に武力行使する「Xデー」に真剣に備える必要がある
  3. 台湾リスクという意味で、これから数日~数カ月間は予断を許さない状況が続く