米国中間選挙年のドル/円

自動車会社などの製造業(輸出業者)の支持を稼ぐために、「米国中間選挙の年は政治的な要因から円高・ドル安になる」ということがよく言われる。以下のチャートは変動相場制以降の米国中間選挙年のドル/円相場だ。

米国中間選挙年のドル/円相場の推移(1974年~2010年)


(出所:石原順)

これを見ると、「円高の年が多い」と思われる読者も多いだろう。ただ、1971年の360円から2011年10月の77円75銭まで日本は通貨安競争に敗北してきた歴史があり、ドル/円の歴史は円高の歴史であった。したがって、円高の年が多いということはある意味で当たり前のことである。その辺は割り引いて考える必要があるだろう。

筆者が注目しているのは20か月移動平均線と米国中間選挙年の相場である。下のチャートは1974年~2013年までのドル/円の月足である。米国中間選挙の年には色が塗ってある。

1992年~2013年のドル/円(月足)と米国中間選挙年の相場


(出所:石原順)

1974年~1990年のドル/円(月足)と米国中間選挙年の相場


(出所:石原順)

ドル/円の20か月移動平均線は「円高・円安のトレンドを決する最重要の移動平均線である。米国中間選挙の年であろうとなかろうと、相場が20か月移動平均線の下で推移している年は円高の年となりやすい。

上のチャートの黄色の年は相場が20か月移動平均線の下で推移している年なので、円高にも納得がいく。一方、上のチャートの緑色の年は相場が概ね20か月移動平均線の上で推移した円安の年だ。これも納得できる。

問題は青色の年で、相場が20か月移動平均線の上で推移していたにも関わらず、急落に見舞われ強烈な円高となっている。中間選挙年10回の内、3回もこのパターンがあった。2006年もこのパターンになるかと思われたが、当時のブッシュ大統領と小泉首相の関係から円高が回避されたと言われている。母集団のデータ不足で株同様に統計的な根拠は乏しいが、こうした動きを見ると、やはり米国中間選挙年の円高には注意を怠れないのではないだろうか…?

1~3月、10~12月はドル高循環、大局的な円安基調には変化はなし

過去の経験則から来年2014年の中間選挙年は円高になるのかというと、その効果は「限定的」と考えている。その理由だが、米日の金融政策の方向性の違い(日本は異次元緩和継続・米国はQE縮小)がある。しかし、それ以上に大きいのは、現在、日本は米国との間に貿易問題を抱えていないことである。黒字の貯めすぎで国際的に非難されているのはドイツであり、日本はおろか中国への批判も聞こえてこないのが最近の情勢だ。

来年のドル/円相場のドル買いの時期は1~3月の第1四半期、10~12月の第4四半期が確率的に有力である。これは米国株や日本株と同じ循環であるが、これも詳細は年明けの年間予測レポートで取り上げたい。

2014年の相場はバブルが暴走する可能性がある一方で、その反動としての相場急落にも十分注意しなければならない。今回、警鐘を鳴らすようなレポートを書いたのは、あまりにも楽観的な相場見通しが多く、リスク管理がないがしろにされているのではないかと感じたからだ。ポジションのコスト近辺に逆指値を置いておくか、トレール注文などを利用して資産管理を徹底すべきであろう。

税金対策の株売りは12月25日に終了した。<米国株の年末5営業日・年始2営業日>や<日本株の12月26日~1月4日>の上昇確率の高さに期待して、日本株やドル/円を枕に新年を迎えたいと考えている。