ドル/円は105円59銭を試しに行く展開

ドル/円は12月20日高値の104円63銭を上抜き、104円80銭台まで上昇してきた。ここ2週間のレポートでは「年末・年始高のアノマリー」を取り上げて、押し目買いのストラテジーを推してきたが、今年は「掉尾の一振」がありそうだ。

以前のレポートにも書いたが、8月安値96円81銭からの上げ波動の教科書的な目標値は106円76銭である。だが、その前に61.8%戻しの「105円59銭という難関」が控えている。

ドル/円(日足)教科書的なターゲットは106円76銭


(出所:石原順)

ドル/円(月足)とフィボナッチのリトレースメント

61.8%戻しの105円59銭を試しに行く展開


(出所:石原順)

いくつかのファンドに「目先どのあたりまでの高値を想定しているのか?」と聞いたところ、「61.8%戻し」や「106円半ば」という声が多かった。テクニカル的にみると、ドル/円相場の動く範囲とされる13日移動平均線+3%かい離が12月26日現在106円78銭に位置しており、教科書的なターゲットである106円76銭と近似した値となっている。

ドル/円(日足) 13日移動平均線±3%かい離(赤のバンド)

相場が21日移動平均線を維持している限り円安基調は変わらない


(出所:石原順)

日経平均は1996年からの上値抵抗線を明確に上抜いてきた

これまでのレポートで日経平均の長期抵抗線のブレイクについて何回かとりあげてきた。2012年12月(下のチャートの①)、2013年3月(下のチャートの②)、そして2013年12月((下のチャートの③)の攻防である。

下のチャートの③のポイントは、「1996年からの岩盤の抵抗線」と言われ、2013年5月の相場ではこの抵抗線にタッチした途端に日経平均が急落したのは記憶に新しい。しかし、12月の相場で抵抗線を上抜き300円超の上げ(12月25日現在)を記録していることから、抵抗線を上抜けたとみてよいだろう。

日経平均(月足)と長期抵抗線

1996年からの上値抵抗線をブレイクし2007年高値奪回も視野に…


(出所:石原順)

日経平均(月足)と長期抵抗線(拡大チャート)


(出所:石原順)

この長期抵抗線超えで日本国内の株の関係者は軒並み強気に傾いているようだ。来年の日経平均の高値予想は18000円~20000円のレンジに集中しているという。かくいう筆者も「日経平均は18300円を目指す」ことを想定しているが、来年の相場はいろいろ注意すべきことが多い。

米国中間選挙年の米国株

歴史的にみると、米国中間選挙年の米国株相場はさえない。ただし、10月~12月の相場は高い。そして、中間選挙の翌年の相場は堅調である。

今週号の日経ヴェリタスに『米中間選挙年の「米国株は尻上がり」』という記事が載っているが、米国の中間選挙年のサイクルは所謂「4月末で利食い・10月の月初から買い」が歴史的な循環となっている。特筆すべきは「9月の相場が安い」ことだ。一方、日本株の方は来年の干支に引っ掛けて「午(うま)尻下がり」というありがたくない格言があるようだ。

母集団のデータが少ないので統計的な根拠はないが、この2つのアノマリーを合成すると、来年の日経平均は1~3月の第1四半期、10~12月の第4四半期が「買い」で勝負する時期と言えるだろう。

『日経平均先物を買い進んだ英巨大ヘッジファンド』という日本経済新聞の報道では、日経平均の買い仕掛けの主役として、ブレバン・ハワード、チューダー、カクストンなどの名前が挙がっているが、おそらく4月の消費増税までに手仕舞ってくるはずである。この辺の事情については、年明けのレポートで言及したい。

10月31日のレポートで紹介したトム・デマークの「NYダウ-アナログモデル」は、その後も84年前の相場と波形が似ている。「アナログモデル」はもともとチューダーファンドが考案したものである。ポール・チューダーがこのチャートを見ていないわけがない。1月相場で米国株相場が急騰するようなら、その後の反動安にも注意が必要だと思われる。

NYダウ(日足) アナログモデル(値幅ではなく波形の相似を重視)

2012年5月以降から現在までのNYダウは、1928年~1929年のNYダウと波形が似ている?
2012年5月~2013年12月24日(赤)
1928年1月~1930年4月30日(青)


(出所:石原順)

米国中間選挙年のドル/円

自動車会社などの製造業(輸出業者)の支持を稼ぐために、「米国中間選挙の年は政治的な要因から円高・ドル安になる」ということがよく言われる。以下のチャートは変動相場制以降の米国中間選挙年のドル/円相場だ。

米国中間選挙年のドル/円相場の推移(1974年~2010年)


(出所:石原順)

これを見ると、「円高の年が多い」と思われる読者も多いだろう。ただ、1971年の360円から2011年10月の77円75銭まで日本は通貨安競争に敗北してきた歴史があり、ドル/円の歴史は円高の歴史であった。したがって、円高の年が多いということはある意味で当たり前のことである。その辺は割り引いて考える必要があるだろう。

筆者が注目しているのは20か月移動平均線と米国中間選挙年の相場である。下のチャートは1974年~2013年までのドル/円の月足である。米国中間選挙の年には色が塗ってある。

1992年~2013年のドル/円(月足)と米国中間選挙年の相場


(出所:石原順)

1974年~1990年のドル/円(月足)と米国中間選挙年の相場


(出所:石原順)

ドル/円の20か月移動平均線は「円高・円安のトレンドを決する最重要の移動平均線である。米国中間選挙の年であろうとなかろうと、相場が20か月移動平均線の下で推移している年は円高の年となりやすい。

上のチャートの黄色の年は相場が20か月移動平均線の下で推移している年なので、円高にも納得がいく。一方、上のチャートの緑色の年は相場が概ね20か月移動平均線の上で推移した円安の年だ。これも納得できる。

問題は青色の年で、相場が20か月移動平均線の上で推移していたにも関わらず、急落に見舞われ強烈な円高となっている。中間選挙年10回の内、3回もこのパターンがあった。2006年もこのパターンになるかと思われたが、当時のブッシュ大統領と小泉首相の関係から円高が回避されたと言われている。母集団のデータ不足で株同様に統計的な根拠は乏しいが、こうした動きを見ると、やはり米国中間選挙年の円高には注意を怠れないのではないだろうか…?

1~3月、10~12月はドル高循環、大局的な円安基調には変化はなし

過去の経験則から来年2014年の中間選挙年は円高になるのかというと、その効果は「限定的」と考えている。その理由だが、米日の金融政策の方向性の違い(日本は異次元緩和継続・米国はQE縮小)がある。しかし、それ以上に大きいのは、現在、日本は米国との間に貿易問題を抱えていないことである。黒字の貯めすぎで国際的に非難されているのはドイツであり、日本はおろか中国への批判も聞こえてこないのが最近の情勢だ。

来年のドル/円相場のドル買いの時期は1~3月の第1四半期、10~12月の第4四半期が確率的に有力である。これは米国株や日本株と同じ循環であるが、これも詳細は年明けの年間予測レポートで取り上げたい。

2014年の相場はバブルが暴走する可能性がある一方で、その反動としての相場急落にも十分注意しなければならない。今回、警鐘を鳴らすようなレポートを書いたのは、あまりにも楽観的な相場見通しが多く、リスク管理がないがしろにされているのではないかと感じたからだ。ポジションのコスト近辺に逆指値を置いておくか、トレール注文などを利用して資産管理を徹底すべきであろう。

税金対策の株売りは12月25日に終了した。<米国株の年末5営業日・年始2営業日>や<日本株の12月26日~1月4日>の上昇確率の高さに期待して、日本株やドル/円を枕に新年を迎えたいと考えている。