下半期、三つの好材料

 今後の見通しですが、私は下半期に向けて、中国経済を巡る好材料はあると分析しています。その理由と背景を3点取り上げます。

 一つ目に、2020年のコロナ禍以降の景気の周期も作用し、2022年の経済成長は、上半期が低く、下半期が高くなるというのは中国政府や政策ブレーンたちにとってのコンセンサスであるという点です。それは、仮に4月から5月にかけて上海市でロックダウンが起こっていなかったとしても、そうなるという意味です。

 二つ目に、特に4-6月期に中央政府や地方政府が五月雨式に打ち出した景気刺激策が効いてくるのが下半期になるという点です。その意味で、私が注目しているのは不動産関連業界です。上記の図表にあるように、1-4月、1-5月、1-6月の不動産開発投資はマイナス成長であり、不動産販売は面積、販売額ベース双方で二桁のマイナス成長という結果でした。不動産販売は6月になって回復の兆しが見えてきていますが、不動産業界が中国のGDPに占める割合が3割近くあるという現状を考えると、(長期的には不動産依存を減らしていくことが求められますが)投資、販売双方で、不動産業界がどれだけ持ち直すかが、下半期の景気回復にとって一つの鍵を握るでしょう。

 三つ目に、習指導部として、「ゼロコロナ」策の限界を自覚し、行動に出始めている点です。今回の統計結果が発表される前、ある党の幹部と話をしましたが、政権内部でもゼロコロナは物議を醸しているようです。「感染者ゼロを目指して徹底した隔離政策、ロックダウンをやっても、変異株ウイルスに感染する国民はまた出てくる。キリがない。他国が取っているような、より柔軟な政策に近づけるべきだという意見は党内で増えてきている」とのことでした。

 表向きはゼロコロナを掲げつつも、各地域の具体的状況をみながら全体的に緩和策を取り、景気刺激策の効果を妨げないという政策に転換する可能性は大いにある、すでにそういう策も取っていると指摘していました。

 上記で指摘したように、4-6月期の経済が低迷した原因は明らかであり、その中心に「ゼロコロナ」策が君臨しているわけですから、そこをこれまで以上に臨機応変にマネージする以外に、政権指導部に選択肢はないと言えるでしょう。

 習政権として、「ゼロコロナ」策の成功をすでに神話化してしまった経緯がありますから、その看板を下ろすことはないでしょう。一方、中国では「上に政策あれば下に対策あり」が常識。看板は掲げられていても、感染者が3桁程度であればロックダウンしない、したとしても短期間で解除するといった実例を積み上げていく可能性が高いと思います。上半期の統計結果を受けて、中国当局は「ゼロコロナ」策をどう機動的に実践していくか。注意深い観察が必要になると思います。

マーケットのヒント

  1. 4-6月期の0.4%増は想定内。「プラス成長しただけマシ」というのが当局の認識。
  2. 下半期に中国経済が回復する好材料は複数ある。
  3. 「ゼロコロナ」策の軌道修正に注目。当局はその必要性を自覚している。