米国株が今年一番の下げを記録するなど、先週は最悪の1週間になりました。

 世界各国の中央銀行による利上げラッシュの中、今週20日(月)から24日(金)は、日本株そして日本円の急激な動きに注意が必要です。

先週:スイス利上げショックで株安。世界中が日銀に注目!?

 止まらない物価上昇を強引に抑え込むため、世界各国の中央銀行が急激な利上げに走り、株価が急落する流れが続いています。

 15日(水)、米国の金融政策を決めるFOMC(米連邦公開市場委員会)は1994年以来、28年ぶりに0.75%の大幅利上げに踏み切りました。

 2022年金利予想も3.4%に引き上げられたため、今後も大幅な利上げが続きそうです。

 市場の一部には1%利上げもありうるといった声があったため、FOMC後、米国株や日本株は悪材料出尽くしでいったん上昇しました。

 しかし、株式市場に再び冷や水を浴びせたのは、16日(木)に発表されたスイス国立銀行の15年ぶりの利上げ、英国イングランド銀行による5会合連続利上げなど、欧州各国の中央銀行による金融引き締め策です。

 急激な利上げによる景気後退が強く意識され、世界の投資家が運用指針にしているS&P500種指数は週間で5.8%安と今年最悪の下げに見舞われました。

 日経平均株価も週間で1,861円安。

 5月16日(月)以降、円安を好感し4週にわたって約1,400円も値上がりしましたが、その上げを帳消しにする大幅下落でした。

 スイス中央銀行の利上げが世界的な株安につながったのは、マイナス金利政策をとる同国の通貨スイスフランを低金利で調達して外貨に両替し、世界中の金融商品に投資する「キャリートレード」という取引が広がっていたからです。

 金利コストが上昇すると、借りたスイスフランを慌てて返済する「キャリートレードの巻き戻し」につながります。それが世界的な株安につながった面もあります。

 そんな中、さらなる株安を救うことになったのが日本銀行でした。

 続く17日(金)の金融政策決定会合で黒田東彦総裁は従来の量的緩和の継続を表明。

 低金利で借りられる日本円はスイスフラン同様、キャリートレードの対象通貨になってきました。

 もし日銀までが国内の物価高に対抗するため、金融引き締めに動いたら、キャリートレードの巻き戻しで、世界の株式市場は大混乱に陥っていたかもしれません。

今週:FRBパウエル議長が議会証言。金融危機発生が心配

 今週は20日(月)の米国市場が祝日です。日本株は下げ過ぎからの反発もありそうで、比較的穏やかな展開になってほしいところです。

 22日(水)、23日(木)夜には、FRB(米連邦準備制度理事会)のジェローム・パウエル議長の議会証言が予定されています。

 パウエル議長は前回5月のFOMCで「0.75%の利上げは積極的に検討していない」と発言しました。

 しかし、CPI(消費者物価指数)の予想外の大幅上昇もあり、先週のFOMCで0.75%の利上げに踏み切りました。

※CPIに関して、詳しくはこちら:1分でわかる!インフレと株価の関係

 そんなパウエル議長が、株式市場をうまくなだめることができるかに注目が集まりそうです。

 日本では24日(金)、5月の全国CPIが発表されます。

 生鮮食料品を除く4月のコアCPIは前年同月比2.1%上昇と13年ぶりの伸びでした。

 今回の発表で、物価がさらに上昇すると、日本銀行の金融政策転換につながりかねません。

 今週も日本株は、ドル/円の為替相場の影響を強く受ける展開が続くでしょう。

 円安なら上昇、円高に振れると急落というのが基本パターンです。

 しかし、これ以上に急速な円安は、量的緩和を続けて物価高の一因をつくっている日銀の立場を窮地に追い詰める可能性もあり、事態は混沌(こんとん)としてきました。

 心配なのは、世界中で進む急速な利上げと株安が引き金になって、金融危機が起こることです。

 先週16日(木)には、90年の歴史を持つ米国の老舗化粧品メーカー・レブロンが破綻しました。

 金融緩和が続く状況では、低金利でお金が借りられるため、「イージーマネー(あぶく銭といった意味)」がさまざまな金融市場に流れ込み、一種のバブルのような状態を生み出します。

 イージーマネーは、ビットコインなど仮想通貨、格付けの低い社債を取引する米国ハイ・イールド債券市場、米ドル建て債務の多い新興国市場、不動産や株式市場など、ありとあらゆる市場に流れ込んできました。

 その資金が市場から流出し、思わぬ危機が発生してしまうリスクにも気をつけないといけないでしょう。

 米国の金融メディアを見ると、まだまだ悲観的な発言も多く、今週も不安定な相場が続きそうです。

 穏やかな円安が続き、FRBのパウエル議長の発言で市場の不安がいったん沈静化することに期待したいところです。