レバレッジ型投資信託、年初来5割下落
日米の株式市場で依然不安定な動きが続いています。前回の本連載で取り上げた、ハイテク株が中心の米ナスダック100株価指数は、5月以降さらに下落幅を拡大し、2020年11月以来となる1万2,000ポイントを割り込みました。
単純な指数の動きを見れば、約1年半前の水準に押し戻されたということに過ぎません。しかし、本連載でもたびたび取り上げてきた、「レバナス」を含むレバレッジ型投資信託の場合、事情が異なります。
「iFreeレバレッジ NASDAQ100」と「楽天レバレッジNASDAQ-100」の2銘柄は、「日々の基準価額の値動きがナスダック100指数の値動きの2倍程度」になることを目指して運用されます。したがって、足元のように株価の下落が続くと、商品設計上、加速度的に基準価額が下落していきます。年初来の基準価額の値動きを確認すると、5月12日時点で既に約5割下落していることが分かります。
レバレッジ型投資信託の値動き
そこでここからは、「レバナス」で大きな失敗を避けるために覚えておきたいポイントを解説します。
※足元のナスダック指数の動向について、関連記事はこちら:「ナスダックの大幅下落と向き合う投資戦略」(5月13日公開、楽天証券経済研究所・香川睦チーフグローバルストラテジスト)
「レバナス」で失敗を避ける三つのポイント
ポイント(1):「ポジションを持っている」という感覚をもつ
投資にまつわる用語で「建玉」(たてぎょく)というのをご存じでしょうか。
建玉とは、英語で「ポジション」とも言われ、株の信用取引や先物・オプション取引などで、未決済のまま残っている契約を指します。信用取引では、証券会社から信用を供与された上でお金を借りて株を買ったり、株を借りて先に売ったりしますが、ルール上、6カ月以内(制度信用の場合)に反対売買をして決済しなければなりません。
投資信託の場合、証券会社(販売会社)からお金を借りて購入しているわけではないので、信用取引のように、いつまでに売らないと(決済しないと)いけないという期限はありません。
しかし、レバレッジ型の投資信託の仕組みそのものは、先物を買い建てていることと変わりはなく、株価の方向性によっては短期間で基準価額が大幅に毀損(きそん)するリスクを持ちあわせています。先述した「レバナス」以外のレバレッジ型で、年初来の基準価額の下落率が60%を超えているものもあります。
一度大きく下げた投資信託の基準価額が、再び元の水準に回復することは非常に難しいと、本連載でも繰り返し言及してきました。さらに投資信託の場合、保有している間は間接的にコスト=信託報酬もかかります。コストを負担し続けて、基準価額がずるずると下落していくのを傍観するのは賢明ではありません。
レバレッジ型では特に、購入前にあらかじめ「基準価額が○%下がったら、損失が出ていても売る」というルールを自分なりに決めておくことをお勧めします。買ったままで安心せず、「ポジションを持っている」という緊張感とともに、解約のタイミングを念頭に置いておくことが重要です。
ポイント(2):積み立てを過信しない
レバレッジ型は理論上、基準価額の値動きが大きくなる傾向にあるので、高い積み立て効果を期待できるイメージがあります。しかし、指数自体が上下を繰り返しながら下落傾向にある場合、レバレッジ型特有の「負の複利効果」が働いてしまいます。結果として基準価額は下落を続け、十分な積み立て効果が期待できません。
※「負の複利効果」についての関連記事はこちら:「値下がりした投資信託、本当に今が買い時?」
右肩上がりの上昇を期待しにくい足元のような相場環境においては、追加的なコスト(信託報酬)を負担してレバレッジ型を積み立てるよりも、シンプルなインデックス型ファンドの方がコストも安く、長期的にリターンを享受できる可能性が高いでしょう。
ポイント(3):指数の投資妙味とレバレッジは分けて考える
香川チーフグローバルストラテジストも言及している通り、長期目線に立てば、ナスダック100指数には十分に投資妙味があると言えるでしょう。冒頭でも触れた通り、足元で下落を続けていると言っても、約1年半前の水準に押し戻されただけです。
しかし、株価指数そのものの投資妙味と、レバレッジをかけるかどうかは全く別の話です。レバレッジをかけた場合、株価が一定の方向に動かないと期待通りのリターンは得られません。
レバレッジは元来、短期的な投資戦略で用いられるものなのです。10年単位の長期的な株価指数の見通しと、足元でレバレッジをかけるかどうかを分けて考えることは、大きな失敗の回避につながるでしょう。