未来のエネルギー源として、人類は何に頼ったら良いか?

 人類は今、主要なエネルギー源を、化石燃料(原油・天然ガス・石炭)に依存しています。ところが、今のペースで化石燃料を使い続けたら、数百年以内に、資源が枯渇する可能性があります。そのために、代替エネルギーの開発が必要となっています。

 主要な代替エネルギー源として、以下3つがあります。

【1】太陽由来のエネルギーを活用
【2】地球内部にあるエネルギーを活用
【3】核エネルギーを活用

 【1】【2】【3】のどれ1つとっても、人間がとても使いきれない莫大なエネルギー量があります。それを人間が使いやすい電気に上手く変えれば良いわけです。ただし、コスト・利便性・安全性すべてを満たし、化石燃料にとって代わることのできる方法が、現時点で見つかっていません。結果的に、化石燃料への依存が続いています。

「エネルギー循環社会」を実現するために越えなければならないハードル

 克服しなければならないハードルは、以下の通りです。

【1】太陽由来のエネルギー活用:地球上に広く薄く拡散しているため、それを集めて効率良く発電する方法を見つけるのが簡単ではない。
【2】地球内部のエネルギー活用:地下深くに熱源が存在するため、そこまで水を送り込んで水蒸気に変えて発電タービンを回すのは簡単でない。
【3】核エネルギーを活用:使用済み燃料の最終処分方法が決まっていない。

 以下、それぞれ簡単に現状を説明します。

【1】太陽由来のエネルギーを活用

 太陽光・風力・水力・潮力などのいわゆる自然エネルギーの活用が進められています。これらは全て、元をただすとほとんど太陽由来のエネルギーです。

 太陽から地球まで、毎日、人間が使いきれない莫大なエネルギーが届いています。そのエネルギーはほとんど地球に留まらず、宇宙に放出されます。このエネルギーのほんの一部だけでも上手く捕らえて人類が利用できるようにすれば、今あるエネルギー問題は全て解決します。

 ところが、太陽から来るエネルギーは、地球上に広く薄く拡散しているため、それを集めて効率良く発電する方法を見つけるのが簡単ではありません。太陽光発電や太陽熱発電は、太陽エネルギーを直接とらえる方法ですが、それだけではとても人類が使うエネルギーに足りません。

 そこで、太陽エネルギーによって生まれる風力・水力・潮力などを使って、大量の電力を得ることも必要になっています。水力を除けば、自然エネルギーを使った発電はこれまで高コストのものが多く、補助金なしには普及が進みませんでした。ところが、近年、技術革新によって急速にコストが低下しています。太陽光を使ったメガソーラーの一部は、補助金なしでも、競争力のある低コスト発電となってきています。

【2】地球内部のエネルギーを活用

 地球内部にも、人類が使いきれない莫大なエネルギーがあります。地球内部へ30キロメートルも掘り進むと、高温のマントルに突き当たります。そこから内側は非常に高温です。地球全体を見渡すと、温度が低いのは私たちが生活している地表(地殻)だけということがわかります。そのエネルギーをうまく活用することも必要です。

 地球内部のエネルギーで発電することにチャレンジしているのが、高温岩体発電です。地球上どこでも、平均すると地下10キロメートルまで掘れば、300℃くらいの高温帯に達します。そこへ水を送り込んで水蒸気に変え、その蒸気でタービンを回せば発電できます。ただし、そこまで深く掘り進んで、水を送り込むには大変なコストがかかります。現時点では、技術的にもコスト面でも、商業利用が可能な発電方法となっていません。

 地球内部のエネルギー活用で、すでに商業利用が可能な低コスト発電が、いわゆる「地熱発電」です。火山地帯などで、地下水が熱せられて水蒸気になり、地下2~3キロメートルの深さに閉じ込められている場所を、地熱資源と言います。そこから水蒸気を噴き出させ、その力を使って発電するのが、地熱発電です。良質の地熱資源が見つかれば、低コストの基盤電源として利用可能です。

 ただし、そのような地熱資源は、世界に遍在しています。日本・インドネシア・米国が、三大地熱資源国と言われています。良質な地熱資源は遍在しており、それだけ使っていても、人類が使うエネルギーは賄えません。

 将来的には、地球内部を20~30キロメートル掘り進む、高温岩体発電を主流にしていく必要があります。

【3】核エネルギー

 ウランから核エネルギーを取り出して発電するのが、原子力発電です。使用済み核燃料からプルトニウムを取り出して行う「プルトニウム発電」まで安全に行うことができれば、莫大なエネルギー量を確保できます。ただし、そこまでやると安全が担保できません。核エネルギーの利用は既存の原発に留め、そこで生じる使用済み核燃料は、地下深くに最終処分するのが現実的の可能性もあります。

 「エネルギー循環社会」を実現するまでに、ハードルはたくさんありますが、それでも私は、未来のエネルギー問題について、楽観的です。化石燃料が枯渇する前に、人類は太陽エネルギーや地球内部のエネルギーを積極的に活用する術を身に付けると、考えているからです。

 近年、代替エネルギーの開発が滞っていたのは、安価な化石燃料が大量に存在していたためです。ウクライナ危機によってエネルギー価格が急騰した今は、自然エネルギーの活用が進みやすくなったと考えています。