原発見直しの機運

 安定的な電力供給を確保することは、国民生活にとっても日本経済にとっても非常に重要です。もちろん日本だけでなく人類全てにとって重要です。ところが、その安定的な電力供給が2つの環境変化によって脅かされています。

【1】「脱炭素」、特に「脱石炭」

 サステナブル(持続可能)な地球環境を守るために「脱炭素」を進めることが、人類全体にとって重要課題となりました。化石燃料の使用を今すぐ全廃するのは不可能ですが、環境負荷の大きい「石炭火力発電」から廃止の動きが加速しています。

 ところが、世界全体では石炭火力への依存が3割程度あり、急速に脱石炭を進めると電力供給に支障を来します。中国・インドなど新興国で石炭火力発電への依存が6~7割と高いことが問題です。日本も、先進国の中では石炭火力への依存が高い方で、電源の約3割を依存しています。

【2】「脱ロシア」、エネルギー安全保障の確保

 ロシアのウクライナ侵攻を受け、天然ガスや原油のロシア依存度を低下させる必要が生じています。ロシアへのエネルギー依存が高い欧州は苦境にたたされています。日本は欧州ほどロシア依存が高くありませんが、それでも原発がほとんど稼働していない現状で電源確保に苦労する可能性があります。

 脱石炭、脱ロシアを同時に進めると、日本で電力供給が急速に不安定になるリスクがあります。自然エネルギーを拡大する取り組みが進んでいますが、とてもカバーできません。エネルギー安全保障を確保するために、化石燃料でも自然エネルギーでもない第3の電源が必要になりつつあります。その候補に原発が挙がる可能性はあります。福島の原発事故を教訓に、安全性を徹底的に強化した原発から再稼働を検討する必要が生じる可能性があると思います。中部電力の浜岡原発などがその候補に入ると予想しています。

 私は東日本大震災で事故を起こさなかった東北電力の女川原発を調査した経験から、安全性確保にどういう条件が必要か独自の判断基準を持っています。浜岡原発はその条件を満たしていると考えています。その根拠を詳しく書くと長文になり過ぎるので、別の機会に説明します。