最悲観シナリオと最楽観シナリオ

 今後、JTのロシア事業に起こることについて、もっとも悲観的なシナリオと、もっとも楽観的なシナリオについて、以下の通り、考えてみました。

 注意していただきたいのは、以下に書くことは、私の予想ではありません。起こる可能性が極めて低いものの、可能性としてゼロではないと考えるシナリオです。

【1】最悲観シナリオ

 最悲観シナリオでは、JTはロシア事業から速やかに撤退しなければならなくなります。ロシア事業の利益が無くなるだけでなく、撤退で巨額の損失が発生することになります。プーチン大統領は3月10日、ロシアから撤退する方針の外国企業の資本を接収する方針を表明しています。さすがに撤退企業の資産をまるまる没収することはできないと思いますが、それでも敵対的企業とみなされるとロシア事業の資産からのキャッシュ回収はかなり難しくなります。

【2】最楽観シナリオ

 最楽観シナリオは、プーチン大統領の失脚です。ロシアは、経済的にも政治的にも軍事的にも苦境にたたされている可能性があります。こうした事態を招いたプーチン大統領にロシア国内からも非難が高まり、大統領が失脚するのが最楽観シナリオです。そうなると、ウクライナの主張がほぼすべて通る形で停戦が実現、ロシアは国際社会に謝罪、米欧日などによる経済制裁はほぼすべて解除されると考えられます。JTのロシア事業は、一時的な事業停止の影響で下ぶれするものの影響は限定的で、ロシア事業は海外タバコ事業の成長を牽引する事業として復活します。

 今後実際に起こることが、上記の両極端のシナリオのどちらに近づいていくかによって、今後の業績は大きく変わります。現時点で、予想を合理的に見積もるのが難しいことが理解できます。

 ご参考まで、欧米のタバコ大手は、ロシア事業について「なるべく損失が小さくなるような方法を考えながら撤退を検討する」方針を表明しています。現地の合弁企業に適切な価格で売却するなどの方策が検討されています。

 現地企業に売却できれば、損失を小さくすることが可能かもしれません。欧米のタバコ企業も、ウクライナ情勢の推移を見守りつつ、対応を考えているところです。