配当性向の目安は75%、利益予想が下振れすると配当が減らされるリスクも

 JTは日本国(財務大臣)が発行済株式の37.6%を保有する最大の株主であり、株主への利益還元に積極的です。2019年12月期まで16期連続で増配してきたことからもわかります。増配に加え、これまで自社株買いも積極的にやってきました。

 2021年12月期に減配となったのは、20年12月期まで5期連続の減益となり、連結配当性向【注】が高くなり過ぎたためです。

【注】連結配当性向(%)
 連結純利益の何%を株主に支払う配当金としているかを示す値。(1株当たり配当金)÷(1株当たり連結純利益)×100で計算する。

 JTは、配当方針として、連結配当性向の目安を75%とする(±5%程度の範囲内で判断)と公表しています。日本企業の平均が約3割であることと比較して、極めて高い配当性向の目標です。JTの配当性向は、近年、以下のように推移しています。

JTの連結配当性向の推移:2019年12月期~2022年12月期(会社予想)

出所:同社決算資料より作成

 今期(2022年12月期)会社は1株当たり配当金を150円に増やす方針ですが、それは1株当たり利益が200.62円に増加すると会社が予想していることによります。配当性向が約75%となるように、配当金を決めています。

 注意すべきは、今期の業績予想は、ロシアによるウクライナ侵攻を織り込まずに作られていることです。今期業績予想を発表したは2月14日です。もし、今後ロシア事業で損失が発生して今期の業績予想が下方修正されると、配当性向を70~80%の範囲に収めるために今期の配当予想を引き下げなければならなくなるリスクがあります。

 したがって、今期の配当金の会社予想から計算される、JTの予想配当利回り7.1%は、信頼性が低いと思います。