2022年も「脱炭素」と「DX(デジタルトランスフォーメーション)」が株式市場の重要テーマになると考えています。今日は、「脱炭素」についての私の基本的な考え方をお伝えします。

脱炭素は可能、地球はエネルギーであふれている

 世界各国が、脱炭素【注】の目標を掲げる時代となりました。日本も「2050年までに脱炭素を実現」と高い目標を掲げています。化石燃料を大量に消費して生活している私たちがたったの30年でそのような高い目標を実現できるのでしょうか?

【注】脱炭素
「カーボンフリー」ともいいます。化石燃料(主成分は炭素)を燃やす(酸素と結合させる)と、二酸化炭素(CO2)が排出されます。二酸化炭素の排出を実質ゼロにすることを「脱炭素」と呼ぶのが一般的です。実質ゼロとは、一定量の排出はあるが、それと同量の二酸化炭素を吸着して地中に封じ込めるなどの方法で、実質的な排出をゼロにすることです。

 私は、人類が本気を出せば、2050年までに先進国で脱炭素を実現することが可能と考えています。なぜならば、地球は外も内も、莫大(ばくだい)な自然エネルギーで満ちあふれているからです。

 そのほんの一部だけ使いこなせば、人類に必要なエネルギーは簡単にまかなえます。人類の持つ技術開発力をフル動員すれば、2050年までに自然エネルギー主体のエネルギー循環社会は実現可能と思います。

【1】太陽から降り注ぐエネルギーの活用

 地球外から、毎日、莫大な太陽エネルギーが地球に降り注いでいます。そのエネルギーは地球にとどまらず、夜になると宇宙に放出されます。そのほんの一部を捉えて電気など人類が使いやすいエネルギーに変換できれば、化石燃料を燃やす必要はなくなります。

 ただし、太陽エネルギーの活用には1つ重大な問題があります。広く薄く地球全体にばらまかれていることです。エネルギーの総量は莫大でも、1カ所にまとまっていないので、効率的に収集することができません。うまくエネルギーを集中させる工夫が必要です。

 水力・風力などを使った発電は、元をただせば、ほとんど太陽由来のエネルギーです。広く薄く分散した太陽由来のエネルギーが、水や風の流れに変わり特定箇所に集中するのをうまく捉えて発電するものです。

 近年、太陽由来のエネルギーを活用する発電のコストが急速に低下しています。水力発電はもともと低コストで、古くから幅広く使われてきました。風力発電は、洋上風力にすることで規模を拡大し、コストを下げています。

 太陽光発電も、メガソーラーのように規模を拡大することで、発電コストを低下させ、補助金なしでも競争力のある「グリッド・パリティ」を達成しつつあります。太陽熱発電も有望です。これからも、太陽由来のエネルギーを使った発電のコストをさらに引き下げる技術がどんどん開発されていくと思います。

 自然エネルギー発電の問題は「出力が不安定」「小規模だと高コスト」の2点です。それについては後段で詳述します。

【2】地球内部のエネルギーを活用

 地球内部にも莫大なエネルギーが存在します。地球の体積の97%以上が摂氏1,000度以上で、このエネルギーを活用する方法の開発も進んでいます。ただし摂氏1,000度以上の上部マントルに到達するまで地下60キロメートルもあり、そこまで掘り進むことはできないしその必要もありません。

 地下2,000~5,000メートル掘り進むと、摂氏200~300度の高温帯に達します。そこに水を送り込み、水蒸気にしてタービンを回し、発電するという方法が開発中です。それが、高温岩体発電と呼ばれる発電方法です。まだ技術的なハードルがたくさんあり、すぐに大規模電源とはなりません。今後の技術開発に期待したいところです。

 ところで、それとは別に、早くから活用されているのが、熱水だまりを使う地熱発電です。熱水だまりとは、火山などによって水蒸気に変わった地下水が、硬い岩盤によって地下に閉じ込められている場所のことです。大規模な熱水だまりが見つかれば、そこから水蒸気を取り出してタービンをまわすだけで、低コストの電気が得られます。出力が安定しているので、ベース電源として使えます。

 ただし、熱水だまりを活用する地熱発電は、できる国が限られます。地熱資源(地熱発電に使える熱水だまり)を持つ国がかたよっているからです。日本・インドネシア・米国は3大地熱資源国と言われます。ただし、熱水だまりを活用するだけならば、永続性のある電源とはなりません。もし、現存する熱水だまりをどんどん開発して使ってしまったら、いずれ地熱資源は枯渇します。

 地中のエネルギーを永遠に使い続けるためには、もっと深くまで掘り進んで、高温岩体発電を実現するしかありません。高温岩体発電ならば、理論上、地球のどこでもできるし、枯渇することなく使い続けることができる電源となります。