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著者の窪田真之が解説しています。以下のリンクよりご視聴ください。
年初はバリュー上昇・グロース下落 景気敏感バリュー株に強気

年初好スタートのNYダウ・日経平均はFOMC議事録公表で急反落

 大発会から始まった先週(1月4~7日)の日経平均株価は1週間で313円下がって2万8,478円となりました。週初は、景気敏感バリュー株が買われて、日経平均は一時2万9,388円まで上昇しました。年初、NYダウ(ダウ工業株30種平均)が上昇して始まり、1月4日に最高値を更新した流れを引き継ぎました。

 ところが、5日の米国市場で、12月のFOMC(米連邦公開市場委員会)議事録が公開されてNYダウが反落してから、流れが変わりました。日米とも週後半は株安となり、日経平均は1週間では313円のマイナスとなりました。

 昨年12月15日に、すでにFOMC結果は発表されています。テーパリング(量的金融緩和縮小)の加速(6月完了予定を3月に前倒し)決定と、2022年に3回利上げを示唆したところまでは知れ渡っていて、そこは織り込み済みでした。ところが、今回の議事録公表によって、市場が織り込んでいる以上にFRB(米連邦準備制度理事会)でタカ派の議論が行われていたことがわかりました。

 サプライズ(驚き)だったのは、今年、利上げをするだけでなく、保有資産の縮小(量的引き締め)を始める検討まであったことが分かったことです。利上げ以上に、量的引き締めが株式市場に与える影響が大きくなる可能性があることから、年初好調だったNYダウは反落しました。

NYダウと日経平均の推移:2020年末~2022年1月7日

出所:QUICKより楽天証券経済研究所が作成

 上のグラフで、2021年からの日経平均とNYダウの動きを簡単に振り返ります。2021年は10月まで、NYダウの最高値更新が続く中、日経平均はボックス圏で推移していました。ただし、NYダウは、11月に入りオミクロン・パウエル・ショック【注】で下落しました。

【注】オミクロン・パウエル・ショック
 南アフリカ共和国で検出された新型コロナウイルス変異型・オミクロンの感染力が強いこと、すでに世界に感染が広がっていることがわかったことを受け、再び経済に重大な悪影響がおよぶ懸念が広がり、11月末にかけて世界的に株が下落しました。それがオミクロン・ショックです。
 もう1つ、不安が広がりました。パウエルFRBがタカ派に転じる不安です。10月まで「インフレは一時的」とハト派発言を続けてきたパウエルFRB議長が「一時的ではない」と発言を撤回してタカ派に転じ、11月にテーパリング(量的金融緩和縮小)を決定しました。

 オミクロンの影響について、その後米国では、経済への影響は限定的との見方が広がっています。日本とは、やや受け止め方が異なります。米国では、「感染力は強いものの軽症が多い」ことと、「ワクチンのブースター接種や経口治療薬の開発で重症化を抑えられる」という見通しがあることを受けて、「経済への影響は限定的」との見方が広がっています。そうした見方を背景に、1月のNYダウは一時最高値を更新しました。

 一方、日本では感染拡大の影響について、慎重な見方が広がっています。沖縄・広島・山口県にまん延防止等重点措置が発動されるなど、消費にブレーキがかかる懸念が出ています。

 パウエル・ショックは日米とも続いています。今年3月までにテーパリングを完了し、年内3回利上げするかもしれないことまでは織り込み済みでしたが、1月5日公表のFOMC議事録でFRBの保有資産縮小(量的引き締め)まで議論していたことが分かり、警戒感が広がりました。