12月に注目したい新興株の動き

 変異株「オミクロン型」の感染者が世界各地で確認され始め、不透明感からリスク資産を手じまう動きが加速しています。これにFRB(米連邦準備制度理事会)のテーパリング加速の織り込みとタイミングが重なり、ダブルパンチでリスクオフの雰囲気が醸成されているように見えます。

 オミクロンはワクチンなどの情報次第で流動的とはいえ、外部環境面での逆風が12月の新興株市場の心配材料。また、足元で急激に個人投資家の信用需給が悪化している影響も尾を引きそうです。

「理由は要らない」「上がる株が正義」「バリュエーションは無視」で株価が上がり、盛り上がっているところに人もアルゴも集結(全員短期勢)…そんな形で11月前半の新興株(とくにマザーズ)市場はバブルちっくな雰囲気をつくっていました。

 ただ、その短期マネーが極端に集まっていたグローバルウェイ、そしてFRONTEOが11月下旬から大暴落。個人の信用評価損益率は今年最悪レベルに悪化、この2銘柄に関しては追証も大量発生したと見られます。

 過去のマザーズ市場は、こうした極端に悪い状況が“陰の極”になり(評価損のとくに大きい信用買い残がロスカットで消えるため)、アク抜けするケースが大半でした。今回もそのレベルの状況にありますが、ただしタイミングが悪い…。

 これは、世界的な株安不安が覆っていることに加え、12月の新興株市場に恒例のマイナス要因「(1)IPOが多いこと」「(2)タックスロス・セリング」が挙げられます。

 今年の12月はIPO数が月間33社と非常に多く、そのうち26社がマザーズ銘柄です。しかも特徴は、33社のほとんどが月後半に集中していること。超過密スケジュールになるのが12月20日の週で、20日3社→21日4社、そして22日6社→23日5社→24日7社という過去に例もないようなラッシュが控えています。

 それぞれに初値買い資金が分散、さらには直近IPO株が次から次へ湧いてくることになるため、方々に短期資金が散らばります。個人マネーが無尽蔵に湧き出てくるわけではないため、この影響はIPO以外の既存銘柄にとっては「流動性低下」という形で影響が及ぶと考えられます。

 そして(2)のタックスロス・セリング。IPOに資金が分散し、他の銘柄の流動性が落ちても「閑散に売りなし」であれば問題なし。ただ、これも毎年のことですが、12月後半にかけてタックスロス・セリングの動きが広がります。

 年末までに、損益通算することを目的として含み損の株をロスカットすることを指します。流動性が落ちているところに、このタックスロス・セリングが被さることで、年内最後に安値を付けにいく銘柄が増える恐れがあります。

 実際昨年12月も、マザーズ銘柄で損出し売りがかさみました。“陰の極”のような下げ方をしたのが「12月22日」、ここで月間安値を付けています。今年は安値で12月に入った銘柄が多数あります。

 年初来のパフォーマンスが悪い主力銘柄でいえばアンジェス、BASE、サイバーダイン、メドレー、JIG-SAW、弁護士コム、ミンカブなど。年末に接近したタイミングで、こうした銘柄がアク抜け感から自律反発を始める局面を見極めたいところ。おそらく、ほぼ同時にリバーサルが始まるはずです。