筆者のNISAを活用した投資手法の具体例

 NISAで買い付けた株を空売りすることでどのような効果があるか、具体的に検証してみましょう。

 なお、いずれも諸手数料は考慮しないものとします。

(1)NISAを使ってA株を1株1,000円で1,000株購入(計100万円)

(2)A株の株価が950円まで下がり、25日移動平均線を割り込む

(3)NISAで投資したA株を保有したまま、950円でA株を1,000株空売り

 NISAで買ったA株が、25日移動平均線を割り込んだので、買ったA株は保有したまま、同じ株数だけ空売りを行います。

 その後の株価の動きにより、パターン1とパターン2に分かれます。

(パターン1)

・A株は850円まで下落した後再度上昇に転じ、25日移動平均線を再び超えて950円に

・950円で1,000株空売りをしたA株を950円で買い戻す

・その後、A株は2,000円まで上昇

(パターン2)

・A株は500円まで下落後、低迷を続け、株価が戻ることはなかったため500円で保有株を売却するとともに空売りも返済

株価が最終的に上昇したときは?

 パターン1の場合、一時的に株価が下降トレンドに転じたものの、そこから反発して再度上昇トレンドに復帰しています。

 もし、NISAで買った株をそのまま保有し続けて2,000円で売却した場合、(2000円-1,000円)×1,000株=100万円の利益になり、100万円×20.315%=20万3,150円の税金が非課税となります。

 950円で空売りした株は再度950円で買い戻しているので、空売りでの利益はありません。トータルの利益は100万円で、20万3,150円の税金が非課税になります。値下がりリスクを抑えながらそのまま保有し続けたときと同じ効果が得られることがわかります。

 なお、今回のケースでは空売りした株価と買い戻した株価が同じでしたが、空売りしたときより買い戻したときの株価のほうが安ければ、その差額だけトータルの利益が空売りせず保有を続けた場合より大きくなります。

株価が下落したままの時はどうなる?

 次にパターン2です。

 NISAで1株1,000円を1,000株買い、それを500円で売った場合、50万円の損失が生じてしまいます。さらには損失の相殺による将来の税金軽減効果(50万円×20.315%=10万1,575円)も失うことになります。

 一方、950円で空売りを実行した場合、NISAでの保有株を500円で売却することで50万円の損失や将来の税金軽減効果消滅となってしまうのは同じです。

 でも、空売りの決済による利益が95万円-50万円=45万円得られます。これには45万円×20.315%=9万1,417円の課税がされますが、それを差し引いた35万8,583円だけ損失が軽減されます。

投資対象は「株価が下がったときに対応できる銘柄」

 このように、NISAで買った株に空売りを組み合わせることで、NISAの非課税のメリットを享受しつつ、株価が値下がりしたときの損失もある程度カバーすることができます。

 この戦略を実行するためには、「空売りができる銘柄」を選ぶ必要があります。具体的には、「貸借銘柄」に指定されている銘柄です。

 上場銘柄は2021年10月末現在で3,786ありますが、そのすべてが空売りできるわけではありません。会社規模が小さい場合や、流動性が低い銘柄など、空売りができない銘柄も多々あります。

 そこで、NISAで買う候補銘柄の大前提として、空売りができる銘柄かどうかを確認するようにしています。もし空売りできない銘柄であれば、NISAでは買いません。

 ちょっと説明がわかりにくかったかもしれませんが、要はNISAで買った株を保有しつつ、下降トレンドになったら同じ株数だけ空売りを実行し、上昇トレンドに復帰したら空売りを買い戻す、たったこれだけです。

 NISAの前提は、「何年もの間、同じ銘柄を長期保有すること」です。ご自身の投資スタイルがこれと異なる場合でも、工夫次第でNISAの恩恵を受けることができるのです。

 個人投資家に与えられたせっかくの恩恵、ぜひともうまく活用しましょう。

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