中国政府は現状打破のための政策的ツールと余力を残しているか?

 18日の会見で、英ロイター社の記者が「第4四半期や2022年の経済をどう展望するか? 政府は経済の一層の低迷に対応するだけの政策的余力を残しているか? FRB(米連邦準備制度理事会)による政策的調整がもたらし得る影響にどう対応するか?」という質問を付報道官に投げかけました。「FRBによる政策的調整」が、来月実行される見込みのテーパリング(資産買入の縮小)を指しているのは明らかです。

 付報道官は次のように回答しました。

「政府は、長期的な実践の中で豊富なマクロコントロールの経験を蓄積してきた…目下、我が国の財政力は不断に増強され、通貨政策にも依然比較的大きな余力がある。情勢の変化に基づいて適宜有力な措置を取ることで、経済の安定的運行を促進することができるだろう。例えば、主要国が打ち出す通貨政策の調整に対しても、我が国の金融管理部門はすでに、事前に政策的な手配をすることで、先進国の政策調整がもたらし得るショックを軽減してきた」

 中国共産党の政策研究をなりわいとする私から見ても、非常に重要なステートメント(立場声明)だと解釈しました。

 結論から言えば、中国政府は、あらゆる不安要素が顕在化する事態をある程度事前に予測し、李克強(リー・カーチャン)首相が今年の全人代で公言したように、2021年全体の経済成長目標を意図的に低めに設定しました。実際に、本稿で検証してきたように、目下、中国経済情勢は、新型コロナ、電力不足、恒大ショック、自然災害、素材高、欧米におけるインフレ懸念やテーパリングなどさまざまな潜在的リスク、構造的問題に見舞われています。

 これらは中国共産党指導部にとっては想定内であり、それらに対応するために、積極的な財政出動、および穏健かつ柔軟な金融政策を適宜発動する用意があると言っているのです。実際に、当局は柔軟かつ大胆に対応、行動していくでしょう。

 私から見て、より重要なのは、習近平(シー・ジンピン)総書記が2049年に向けた国家戦略・目標として掲げる「共同富裕」を実現するために打ち出す一連の政策であり、それらがもたらし得るチャンスとリスクをどう分析し、対応していくかにほかなりません。

 そして最近、「共同富裕」をめぐって、またおもしろい動向が出てきました。近々、本連載でも扱いたいと思います。