タリバンが電光石火でアフガン全土を席巻

 米国務長官が「タリバンの急進にはびっくりした。アフガン軍は国を守れず予想以上に早く負けた」と語っているが、タリバンは猛スピードでアフガニスタン全土を掌握しつつある。

 数週間で次々と州都を制圧、15日には首都カブールに進攻し大統領府を占拠した。ロシアと中国はタリバン指導者と関わることに前向きな見通しだ。

 バイデン米大統領にとってアフガン問題は八方塞がりの状況となっている。米国にとってはベトナム戦争と同様の敗戦に思えるが、世間はアフガニスタンの問題などには「無関心」であり、どうでもよいらしい。

 米国の凋落が言われて久しいが、別に驚くべきことでもないのだろう。世界で時間を掛けて築いたものがどんどん崩れていく。もうグレート・リセットに向けて世界は本格的に動き出している。

【民主主義諸国に住む多くが「自分たちは不可侵の自由を享受しており、その自由が全体主義・共産主義・独裁主義体制を打倒してきた」と考えている。しかし、それは大いなる勘違いであり、思い上がりではないか、むしろ今、自由が急速に失われているのではないか。

「無関心」そして「自己満足」も人々が都市封鎖と自由喪失を受け入れた要因かもしれない。オーウェルもまた『1984』で「人は自由と幸福のどちらかを選ぶとすれば、圧倒的大多数が幸福を良しとする」と書いている。この選択が政府の給付によって助長された。いくつかの統計によると米国には働くよりも働かないほうが良い生活を送れる人が何百万もいる。それが別の問題を導く。高失業率での人手不足だ。

 もっとも、さらに別の疑問も生まれる。ほとんどの西側民主主義国で政府が経済の50%近くを補っている。金融の領域でいえば西側民主主義国が人々から「貯蓄」を増やす能力を奪っているのは明らかである。金利がゼロ近辺やゼロ未満で、どうして貯蓄ができるのか。資本が何の収入ももたらさなければ、誰が貯蓄を増やして生き残れるのか】(マーク・ファーバー)

 レポートの読者に対してマーク・ファーバーは、「個人的に、このような介入主義・権威主義的な環境が経済、私の大切な読者の幸福、そして特に資産市場に資するとは思えない。むしろ、不幸な結果を招くだろう」と書いた。筆者も同感である。

 マーク・ファーバーは、「キャンセル・カルチャー(排除文化)」とは、人の“アラ”を探して、それをSNS上で炎上させて、その人を全否定し、ある集団から排除させようとする風潮だと述べている。

 筆者が指摘してきたように非寛容な世界が到来している。これから、本格的な「不和の時代」に入るだろう。