日本郵船株、ファンドマネージャーとしての投資判断

 私がファンドマネージャーならば、日本郵船にトレーディングベースの買いポジションを維持したいと思います。

 下半期の純利益1,500億円の会社予想をどう評価するか重要です。「上半期の3,500億円から急減、これで海運ブームは終わり」と考えるならば、ネガティブです。良い時と悪い時の落差がきわめて大きい海運業ですから、良い時が過ぎ去ってしまえば先行き利益が大きく落ち込んでいく懸念が出ます。そう考えるならば、今から買っていくのは、危険という判断となります。

 ただ、下半期の1,500億円は日本郵船の予想というよりは、仮に置いた数字と言った方が良いと考えます。同社が経験したことのないブームを前に、先行きを予想することは困難です。下半期に、海運需給が正常化に向かい、市況がある程度軟化することを前提に1,500億円という数字を仮置きしているということです。

 とはいえ、下半期の1,500億円という数字は決して低い数字ではありません。13年ぶりの最高益をあげた前期の純利益1,392億円を超える水準だからです。これを前提とした、PER2.8倍はきわめて低く、配当利回り8.4%はきわめて高水準です。

 もし定期船のひっ迫がさらに長期化し、下半期の利益が1,500億円を超えていくようだと、株価は、8月17日の8,370円を超え、1万円以上に上昇する期待が高まります。

 したがって結論として、私がファンドマネージャーならば、日本郵船にトレーディングベースの買いポジションを維持していきたいと思います。定期船のひっ迫がつづき、不定期船の市況も改善してきた今、ポジションを落とすのは早いと思います。

 ただし、山の天気のように変わりやすいのが、海運業界の環境です。高水準の需要が一巡し、供給不足が解消すると一気に海運不況に逆戻りという悲観シナリオもないとは言えません。トレーディングベースで買い、「良い話が続く限り持つ」「悪い話が出たらすぐに売る」心積もりをしておくというのが、私がファンドマネージャー時代の海運株投資の姿勢でした。