カナダドルは金融政策の転換で強気相場入りか?

 前述のマイナード氏であるが、為替市場についてはドルを弱気に見ている。その理由として、FRB(米連邦準備制度理事会)による流動性向上を目的とした終わりのない債券購入プログラムを指摘した。主要通貨に対するドルの動きを示すドルインデックスは90前後まで落ち込んでいる。

ドルインデックス先物(日足)

出所:石原順

 2020年3月の暴落以降、ビットコインは上昇を続けている一方、ドルインデックスは下落の一途をたどっている。今年3月に米国の長期金利が上昇した際にドルは強含む場面もあったが、金利の動きが落ち着きを示したのに合わせ、ドルも低下傾向にある。

 そうした中、カナダでは、2022年後半にも金利の引き上げを開始する可能性があることが伝えられ、カナダドルは堅調な動きとなっている。シーズナリーから見てもカナダドルは4月下旬から上昇する傾向にある。

カナダドルのシーズナリー 4月から上昇基調に…

出所:エクイティクロック

 ドル/カナダドルとカナダドル/円は日足でカナダドル買いのシグナルが点灯している。

カナダドル/円(週足)順張りの標準偏差ボラティリティトレードモデル

出所:楽天MT4・石原順インディケーター

ドル/カナダドル(日足)順張りの標準偏差ボラティリティトレードモデル

出所:楽天MT4・石原順インディケーター

 米国とカナダの経済はいずれも力強く回復しており、回復状況はどちらかと言えば米国の方が勝っている。だが米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長は、量的緩和縮小(テーパリング)をいち早く決めたカナダ銀行(中央銀行)のマックレム総裁とは異なる政策運営の道筋を選びつつある。

 マックレム氏は、成長見通しの明るさが増したことで来年後半には需給ギャップが解消し、物価圧力が生じると想定してテーパリングに踏み切った。対照的にパウエル氏は、持続的な物価上昇局面が実現するのを待ち、これまで物価上昇率が目標の2%を下回って推移してきた状況を勘案して、今後しばらく2%を超えても容認しようとしている。

 こうした姿勢は、FRBが昨年打ち出した新たな金融政策運営の枠組みを実践していることを意味する。政策転換の要は、より積極的な雇用最大化の追求だ。FRBは長年にわたって十分な物価上昇を生み出すことに苦戦してきた経験から、もはや失業率の低下が自動的に賃金上昇に、そして物価上昇にはつながらないと見なしている。だからこの頑健な景気回復を利用して、米社会で最も不利な条件に置かれたグループの失業率までも押し下げる態勢を強化しているところなのだ。

「パウエルFRB議長が進める、前例なき金融政策運営」(ロンドン 27日 ロイター)

「40年前のレーガン政権は減税と小さな政府を柱とするサプライサイド経済学を唱えたが、バイデン政権の経済政策は「大きな政府」に方向転換する形となる」(29日 ブルームバーグ)と報道されているが、米国は「インフレ街道」へかじをきったということである。