2.銘柄ウェイトの変更も利用されて損をする

 株価指数の銘柄入れ替えの他に、指数における銘柄の構成ウェイトの変化も、事前に予想できれば銘柄入れ替えと同じ理屈で利用されて指数及びインデックスファンドの投資家が損をする可能性がある。

 影響が懸念されるのは、TOPIXを含めて世界の多くの指数が採用する浮動株調整だ。インデックスファンドの運用金額が大きくなると、例えば、時価総額ウェイトが大きくても、大株主が大きなシェアで株を抱えていて、市場に出回る株式が少ない場合に、機械的にウェイトを合わせようとするインデックスファンドの買いで、株価に歪みが生じることが問題になった。

 この問題を回避するために、指数自体を大株主の保有を除外するなどの作業によって、市場で売買されていると推定される(正確なものとは言いがたい推定だが)株数で計算したものに変更する動きが現れて、現在はむしろこの方法が主流だ。

 ところが、この方法だと、指数の計算が変更される期日よりも前に、ウェイトの変更、即ち、インデックスファンドで売り買いされる銘柄と株数が分かってしまうので、ここでもインデックスファンドの投資家はトレーダーに「喰われる」。

 随分昔の話になるが、「浮動株調整」という仕組みを聞いたとき、筆者は「金融界はあれこれ理由を付けて、自分たちが儲かる仕組みを作るたくましさがあるのだな」と感心した覚えがある。もちろん、インデックス投資家にとっては、歓迎できない話だ。

 影響を調べるには、かなり精密にデータをチェックする必要があり、筆者が現在手元で利用可能なデータでは無理だ。

 筆者の知り合いのいわゆるクオンツ・アナリストは、TOPIXで年間数十bp影響があるのではないかと言っているが、筆者は、現在責任を持って影響の大きさを指摘できる根拠を持ち合わせていない。しかし、大きさが正確に分からないとしても、影響は存在するはずだと考えている。

3.ファンド内の売買コストはゼロではない

 前述のように、インデックスファンドがターゲットにする株価指数は、採用銘柄の変更やウェイトの変更でポートフォリオとしての内容が変化する。この場合、売買には何らかのコストが掛かる。

 指標としてのインデックスそのものは計算を変更するだけで、売買コストを払わずに形を変えることが出来るが、リアルな運用資産ではそうはいかない。インデックスの内容によっては、そこそこの大きさの売買コストをファンド内で負担しなければならない。

 アクティブファンドの方が保有銘柄のファンド内売買はインデックスファンドよりもかなり多いのが普通で、このコストはアクティブファンドが運用成績上相対的に不利であることの原因の1つだが、インデックスファンドでも売買コストが問題になることはある。指数にトラックする運用のうまさと共に、投資家の側では、指数選択の巧拙が問われる。