7.インデックスにも使用料が掛かる
インデックスファンドのターゲットになる株価指数は、指数を計算・公表し、そのデータを販売しているインデックスベンダーの「商品」でもある。現在、インデックスベンダーは、インデックスの運用会社やインデックスのデータを使う分析ソフトの供給者に対して、自分のインデックスの名称とデータを使うことに対して使用料を徴収している。
運用会社に対する使用料は、インデックスファンドの運用資産額に比例して、資産額の2bpとか3bpといった単位で設定される。インデックスベンダーの言い分は、「運用会社は我々の商品の知名度やデータを使って商売をしているのだから、そのメリットに応じて、我々にパテント料を支払うのは当然だ」といったものだと推測される。
インデックスを計算・公表するために、データ代や計算コスト、公表のためのコストなどが掛かることは事実なので、インデックスベンダーがインデックス利用に対価を求めること自体は正当だろう。但し、問題はその水準だ。
運用管理費用の引き下げ競争が進行してきた今日、米国でも日本でも、インデックスベンダーへの支払いが運用管理費用全体に占める比率が無視できない大きさになってきた。インデックスベンダーへの支払手数料の故に、インデックスファンドの運用管理費用引き下げが阻害されるようなケースも出てきた。
一部の運用会社では、より安いインデックス利用料を求めて、インデックスファンドがターゲットとするインデックスを変更するような例も出てきた。また、大きな資産を運用する年金基金などのアセットオーナーの中には、インデックスベンダーと利用料を直接交渉することを検討する組織が現れた。大きな資金を運用するアセットオーナーは、ベンチマークとして使用するインデックスを変更する権限を持つので、インデックスベンダーに対して交渉力を持つはずであり、彼らが交渉する方が効果的な場合はあるだろう。
「自家製インデックス」利用の勧め
さて、インデックスファンドに関連する7つの弱点を改めて振り返ると、
(1)インデックスの採用銘柄や銘柄の構成ウェイトの変更に関わる情報が第三者に事前に漏れること、
(2)ファンド内の売買コストが掛かるインデックスであること、
(3)ファンドが大きくなりすぎること
(4)デリバティブ取引に影響されるなど「運用」目的でない使われ方をするインデックスであること、
(5)インデックスファンド自体に高い手数料があること、
(6)インデックスベンダーへのインデックス使用料があること、
などに不都合の源泉があることが分かった。
筆者が、運用会社に提案したいのは、(4)は程度の問題として、その他の問題の殆どを回避する方法は「自家製のインデックス」を作ってインデックス運用を行うことだ。(1)に関しては、リバランス後に銘柄やウェイトを公開するといい。指数は専門の検討組織を作って客観的に妥当な方法で作って(銘柄数、選択基準、ウェイト、リバランスのタイミング、データ公開の方法などに工夫が要る)、その値をリバランスの後に公開すればいい。
リバランス時に悪影響を受けずに済むことは、公開されているインデックスを使うインデックスファンドに対して、インデックスファンドの運用競争のレベルでは小さくないアドバンテージになる可能性がある。
(2)は指数の作り方を工夫することで改善することができるし、(3)は残高が何兆円かになってから心配したらいいので当面の問題ではない。
「インデックス運用がなぜ有利か」を真剣に考えて、「運用の目的に特化したインデックス」を作ればいいし、その場合には手数料さえ十分低廉に設定できたらもはや「インデックスファンド」と呼ぶ必要が無いかも知れないが、アクティブファンドとのマーケティング上の棲み分けと、指数の推移を示せることによる顧客への分かりやすさの観点から、「自家製のインデックスにトラックするインデックスファンド」が落とし所のように思われる。
もちろん、インデックスベンダーにインデックスの使用手数料を払わずに済むことはかなり気持ちがいいだろうし、現実的に有利なことに違いない。
個人投資家は、趣味も兼ねて個別銘柄でポートフォリオを作って自分で運用する方法(多少のスキルと忍耐を要する)と1.〜7.の要素が「よりマシ」なインデックスファンドに静かに乗り換えて運用する方法の2通りの道がある。前者についても、後者についても、適宜情報をお届けしたい。